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自分の内面と向き合った日々…
すべては、いまの自分に繋がっている

回復に向かう「3つのkey word」

摂食障害に至る原因は、一言で言い表せられるものではなくて、幼い頃の家庭環境や、いじめられた経験、真面目すぎる性格などが絡み合って、摂食障害へと至ったのだと思います。

そして、真っ暗闇の中にいながらも「摂食を治そう!」と歩き始めた頃、「なぜ私はこんなにも生きづらくなってしまったのか??」を考えた際に、それまでの私は自分の気持ちに対し、ウソをついて生きてきたということに気がつきました。

そして、過去を悔やんだり、だからこそ未来を悲観したり、そんな今の自分に絶望したり…。そういったことが見えてきたので、これからは、♪自分の気持ちに素直になって、♪自分を信じて、♪今を生きようと心に決め、これを『自分らしく生きるための指針~3つのkey word~』として、自分の中で持ち続け、実践してきました。

例えば…、「私は太ってるから、○○出来ない」と思っている。だけど「本当はやってみたい」というのが自 分の素直な気持ち。
「じゃあ、その思いを信じて、実際にやってみよう!」…というような感じで、自分の “思い” をひとつひとつ “行動” に移してきました。 「自分自身の思い込みや、自分で自分に設定した限界を解いていく」、そのひとつひとつのステップが、私にとっての摂食を治す過程そのものでした。

治す過程(「自分の人生を生きる」において)は、自分に勝つ・負ける、というイメージではなく、自分自身の 心の中で起こっていた“対立”を、ひとつひとつ“統合”してきたような感覚です。(例えば「食べたかったらたべてもいいよ」とか、「やせたい気持ちもわかるけど、生きる上では食べる事は大切な事なんだよ。だから食べていいんだよ」というような感じ)

なので、私の中で「摂食障害が治った」のは、「弱い自分に私が勝ったから治った」のではなく、「いろんな思いや感情を抱いている私を、自分自身に繋げ、統合してきたから治った」のだと認識しています。

治っていく過程の様子ですが、決して直線的に治ってきた訳ではなく、自分の目の前にそびえ立つ大きな壁に対し、階段となるステップをひとつひとつ積み重ねては、登り、積み重ねては登り…を繰り返すような感じで「もうこれで大丈夫!」と思っても、何度も何度も過食の波にのまれ、その度にひどく落ち込み、そこからまた自分を見つめ直し、歩き出す、という作業を繰り返してきました。

摂食障害になる前と今

“摂食障害になる前” と “回復する前”、そして “回復後から今” とでは「生きる」姿勢が変わりました。
摂食障害になる前は、自分自身に目標があるわけでもなく、ただ訳もわからず、目の前の現実に対し必死で生きていました。(優等生な自分でした)
摂食障害のまっただ中は、その「目の前の何に対してもがんばる自分」の糸が切れ、無気力・無感動になり、ただ「やせることのため」に毎日を生きていたように思います。
摂食障害を治す過程を経た後(摂食後)は、自分の中にある “思い” から、“行動” に移せる自分になりました。今の私には、自分の意志で自分の人生を選び取り、自分の足で歩いている~生きている~という感覚があります。

摂食障害があったからこそ…

これは治す過程を経てきてわかった事なのですが、摂食障害を抱えていた頃の私は、摂食障害があったからこそ、外側(現実)の世界から受けるストレスから自分自身を守っていたんだな、ということに気がつきました。(自分の中で、常に「やせる/太る」「食べる/食べない」ということで悩んでいたので、外側から受ける問題~例えば彼氏の事だったり友達関係の事だったり~について、悩まなくて済んでいました。自分の本当の感情と向き合わなくて済んでいました。)

そして、私の人生に摂食障害という問題が起こったからこそ、 「何のために生まれてきたのか?」「何のために生きるのか?」 という自分自身への問いに対し、その答えを真剣に追い求め、探してきたように思います。
だからこそ「生きる」ということについての“本質”に気づく事ができたのだと思っています。なので、私にとって摂食障害は、大切な事に気づくために、私自身に落ちてきた隕石のようなものだと思っています。

だから「摂食障害で失ったことは何?」と言われても思いつかないのですが、「得たこと」はと言うと…、 摂食障害を経験し、治す過程を体験してきたからこそ「今の自分」に繋がってきたそのすべてです。上手く言葉で表現できないけれど、すべての経験・体験は、今の自分に繋がっているんだなって思っています。

最後に

摂食障害を治そうと歩きはじめた頃の私は、誰とも何とも繋がっていなくて、「自分はどこへ向かいたいのか?」「今の自分はどこにいるのか?」それさえもわからない状態だったのだけれども、ひとつひとつ自分の心の声に耳を傾け、自分の本当の気持ちを知り、そ の思いを信じ、ひとつひとつ行動に移す事で、少しずつ道が繋がり、広がってきました。

今、真っ暗闇の中をたったひとりで生きていと感じておられる方にも、きっと、あなただけの、あなただからこその道がある、と、私は信じています。

どうか、自分自身の心に素直になって、その思いを信じて、今という時を生きていって欲しいなと思います。

(2009/7/11 取材・文 あかりメンバー 桂けい子)

 

プロフィール/発症から回復まで

saahko(36歳)

高校受験を終えた頃、ぽっちゃりし始めた自分に対し “このままではいけない!” と思い、ダイエットをはじめたのがきっかけで発症(当時、15歳の高校1 年生)。はじめの頃は1日約500kcalと、ほとんど食事を摂らなかったが、数ヵ月後に吐かない過食へと移行。自分の意志に関係なく、一旦食べ始めると止まらず「やせること」以外は全てにおいて、無気力・無感動になっていた。
自分の未来に意識を向けた時に “これは一体、いつまで続くのか?……もしかし て……ずっと?” と、出口の見えない真っ暗闇の中に、
自分だけがただ独りいるような、孤独感と絶望感を感じていた。
常にダイエットをしている状態(常に食べることを禁じている状態)だったため、「食べたい」欲求を、お菓子作りをする事で満たしていた。

高校卒業後、製菓の専門学校→姉妹校の栄養士校へと進むが、頭の中は常に「食べる/食べない」「やせる/太る」でいっぱいの上、授業は食物関係の事ばかりだったので “このままでは私はつぶれてしまう!” と思い、栄養士の専門学校2年過程のところを1年で中退。そこから、“摂食障害を治そう!”と、アルバイト等をしながら『自分らしく生きる道』を模索・探求し始め、23歳ごろに回復する。

今は2児の母であるが、“私にしかできない事・私にだからこそ出来る事がきっとあるはず!”という思いから、インターネット上の摂食障害の方達の集う掲示板(『こころの問題を考える会』)に書き込みを始めたり、自分のホームページ(『雨でも晴れでも』)を開くなど、独自の活動を展開。2008年11月に日本摂食障害ネットワークの主催する「摂食障害フェスティバル」に参加した際に、あかりプロジェクト発起人、山口いづ実さんと出逢い、初期メンバーとして携わった。