トップ >> 摂食障害と暮らす >> 摂食障害を抱えながら子育てをなさっておられるお母さまへ 明橋大二医師インタビュー

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友人・恋人・家族~摂食障害と子育て

『子育てハッピーアドバイス』の明橋大二先生にお聞きしました~摂食障害を抱えながら子育てをなさるお母さまへ~

摂食障害を抱えながらの子育てについて

<拒食症だからといって、そのことで支障や問題はありません>

―拒食の症状を抱えた方の子育てについて、先生のお考えをお聞かせいただけますか?

 基本的に摂食障害の人は自分が栄養を摂るのは不得意な人が多いですが、人に栄養をつけさせるのは得意な人が多い。みんなとは言いませんが料理も上手な人が多い。カロリーもばっちり知っていますしね。
 自分が食べなくても、人が食べることで自分も食べたような食欲が満たされる部分がある。自分は食べなくてある程度食欲が満たされる。そういう手段でもあるということと、「美味しい」と感謝されると自己評価が上がる。
 食欲も満たされ人にも喜んでもらえて自己評価も上がり、両得なんです。
 是非そういう特技を活かして生きていかれたらいいと思うんですね。だから、子どもの成長の心配なんていりません。

―自分は食べずに子どもには食べさせるということで、子どもに何かしら悪影響があるのではないかとか、弱い子どもに育ってしまうのではないかという不安を持たれている方が多いと思うのですが、その点に関して先生はどのようにお考えですか?

 悪い見本を見せているんじゃないかということですね。
 だけど、子どもはあんまり見ていません!子どもは自分が食べることに必死で、親がご飯を食べているかどうかなんて見ていないですよ。むしろ、ちゃんと子どもの栄養のことを心配しておられるわけだから大丈夫です。
 自己評価が低いから、やっていることでもやっていない、やっていないと思っているんですね。「やってない」と言うけれど、ちゃんとやってるんです。
 摂食障害の人でも、鬱になったりしてご飯が作れなくなったりする場合もあるかもしれない。そういうときは、旦那さんに頼むとかしばらく入院をするなどして治しながらじっくりとやっていけばいいんです。

―拒食の症状を抱えた方が子育てをすることで、特別、子どもの成長に影響がでるようなことはないということですね。

 拒食症だからといって、そのことで支障や問題はありません。

―親御さん自身の自己評価を高めて、子どもも自分に自信が持てるように育っていったら大丈夫ということですね。

 その通りです。

―では、拒食の症状を抱えながら子育てをされている方へメッセージをお願いします。

 「症状を抱えながらもこんなによく子育てをよくやっている」と自分に自信をもってください。
 拒食の人は妊娠すること自体難しい。生理が戻るところまでいって、相手の人と出会って結婚した。おそらく葛藤があったと思うんです。「自分が子どもを生んでいいのかな」と悩んだと思う。それでも勇気を出して生んだわけです。
 その判断は絶対間違ってなかったし、症状を抱えながら子育てしている自分を是非ほめてあげてほしいです。

<過食症は、罪悪感からいかにのがれるかというのがポイントなんです>

―拒食の人は「症状を抱えながらもこんなによく子育てをよくやっている」と自信をもっていけば大丈夫とのことでしたが、それはきっと過食の方とか過食嘔吐の方にも共通することなのでしょうね。過食・過食嘔吐の症状を抱えた方の子育てについても、先生のお考えをお聞かせいただけますか。

 過食症の場合の一番のネックになるのは罪悪感なんですね。
 拒食の人は拒食している間はあまり罪悪感を感じない。制限してがんばっている自分を支えにして生きています。だからこそ症状にすがりつくというか、逆に言えば拒食を失うと自分の価値を失ってしまう。断食というのは昔からあって精神の強さの象徴みたいじゃないですか。だから、体は痩せ細っているけれどもテンションは高いんですね。
 過食は、食べてしまう自分を責める。
 食べてしまったという罪悪感で苦しくなるとさらに自己評価が低くなって、辛くなって過食。食べ終わった後に食べ散らかした残骸を見ると、またやってしまったという罪悪感。罪悪感が実は負のスパイラルの原動力なんですね。これは過食に限らず嗜癖に共通した力学です。
 嗜癖というのは要するにどんどん同じものにはまり込んでエスカレートしていくわけだけど、エスカレートする原動力になるのは罪悪感。アルコール、買物依存もそうです。周りからも責められるし自分も情けなくなりますしね。
 過食も一つの嗜癖行動で、それを止めるには、罪悪感からいかにのがれるかというのがポイントなんですね。
 そのためにはまず周りの人が、症状が出たときに責めないことが大事です。
 「またやっとるんか」とか、「アフリカの人とか食べ物で困っている人もいるのに何でそんな無駄なことするんや」とか。そう言われるとよけい辛くなって食べる。
 アフリカの人も苦しいけれど、摂食障害の人も苦しいんですよ。生きるか死ぬかのところで戦っているという点では同じです。そんな中を症状と戦っているわけで、それを周りが理解してあげるのが大事です。
 過食の症状というのは、一つのばけものみたいなものなんですよね。ばけものと戦っているわけで辛いことなんです。だから戦っている人を責めないでほしい。
 そして、やっぱり自分自身でも責めないでほしいです。過食するのは、意志が弱いからとか、自己中心的だからとか、甘えているということでは絶対にないので、病気なのだからと考えてほしいです。病気だから不可抗力です。決して自分の責任ではありません。だから罪悪感を持つ必要はないということです。
 インフルエンザにかかると「何で40度も熱出してしまったんだ。なんて自分は駄目な人間なんだ」と自分を責めないですよね。だって仕方ないですもん。なってしまったんだから。それと同じで“過食”という困ったものにとりつかれてしまった。これは自分ではどうにもできないんです。本当にこれは大変でつらいことです。だからそういう自分を責めないでほしい。

<むしろ過食や過食嘔吐しながらも子育てしてがんばっている自分をほめて欲しい>

―子どもにはお菓子などを制限しているのに、自分は隠れて大量に食べているという罪悪感が苦しいとの声もよく聞きます。

 自分は病気なんだから、子どものお菓子を制限するというのとは別問題だと思っていいです。切り離して考えましょう。

―なるほど。では、嘔吐をしているときに子どもにかまってあげられなくて申し訳ない気持ちになるという声はいかがですか。

 これは、かまうことはできませんよね。仕方ないです。
 トイレに鍵をかけて、その間は「ちょっと待っててね。」と言って、終わったら相手をしてあげればいいのです。
 子どもをかまわないといけないというのがありますけど、24時間ずっと突き放すというのがよくないのであって、「そのときはできないけど後で相手する」というふうに子どもに伝えて、後でかまえば大丈夫なんです。

―このままでは何らかの悪影響があるのではないか、弱い子どもに育ってしまうのではないかと不安に思われている方が多いと思うのですが、その点に関して先生のお考えをお聞かせいただけますか。

 過食自体が子どもの成長に悪影響になることはありません。だから、むしろ過食や過食嘔吐していながらも子育てしてがんばっている自分をほめて欲しい、自分を責めないことに力を入れてほしいんです。