トップ >> 摂食障害と暮らす >> 摂食障害を抱えながら子育てをなさっておられるお母さまへ 明橋大二医師インタビュー

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『子育てハッピーアドバイス』の明橋大二先生にお聞きしました~摂食障害を抱えながら子育てをなさるお母さまへ~

親子ともども自己肯定感を育むことが一番大切です

<子育てで一番大事なのは、子どもの心に自己評価、自己肯定感といわれるものを育んでいくことです>

―先生は『子育てハッピーアドバイス』などの著書をお持ちで、『NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと』の理事長でもいらっしゃいますが、子育てや子どもの成長に関しての先生のお考えをお聞かせいただけますか?

 子育てで一番大事なのは、子どもの心に自己評価、自己肯定感といわれるものを育んでいくことなんです。
 もちろん、しつけとか勉強も大事だけど、その土台になるのが自己評価、自己肯定感ということなんですね。
 自己評価、自己肯定感というのは、要するに「自分は生きている価値がある」とか「大切な存在だ」とか「必要な人間だ」という感覚。それがあってこそ、しつけが身についたり勉強への意欲につながってくるわけです。
 逆に、心配な症状を持つ子どもを見ていると、根っこにあるのは必ずと言っていいほど自己肯定感の低さがあるんですね。
 摂食障害の人もまさにそうです。摂食障害というのは、体重増減の問題でもなく、ご飯が食べれるか食べれないかということでもなく、自己評価の問題からきているわけです。
 だから、子育てにおいて子どもの心に自己評価、自己肯定感をしっかり育んでいくこと、これがまず大前提ですね。そしてこれは、実は子どもだけに大事なのではなく、大人にとっても、すべての人にとって大切なことなのです。

―そういった、子育てで自己評価が一番大事だとか、摂食障害の根本にあるのは自己評価の低さだという考え方というのは、当事者のわたし自身にはとてもしっくりくる考え方なのですが、医学界の中では一般的な考え方なのですか?

 一般的ではないと思いますね。本とか見てみると全然そういうことに触れていないものはないと思うんですが、はっきり単刀直入に「これだ」と断定して言う本はあんまりないような気がしますね。だから、よけい迷っちゃうのかなと思いますね。

―ほんとですね、そうかもしれませんね。
では、自己評価が子育てで一番大事ということなのですが、摂食障害の根本には自己評価の低さがあるということで、その自己評価の低い方が子育てをされるときに起こってくる問題がいろいろあると思うのですが、それについてお聞かせいただけますか?

 それは摂食障害の人にかぎらず、今の親御さんたちの多くが悩んでいる悩みなんですね。子育てが辛い、子育てに自信がないという親御さんが非常に多いんです。
 何故子育てが辛くなるかというと、実は親御さん自身が自己評価が低いんですね。自己評価が低い人が子どもの自己評価を高めようと思ってもなかなか難しい。自分のことを駄目だと思っている人は、子どもの駄目なところしか目がいかないし、子どもが悪さしていると自分が駄目な証明みたいになってしまうので困るんですね。
 子どもがしっかりして、勉強ができて、お行儀もよくて、そういう子であって初めて母親として自信が持てると思うわけです。だからついつい子どもに叱り、よけいに否定の目で見てしまう。
 そうならないためにはどうしたらいいかと言ったら、まずは親御さん自身の自己評価を育ててあげないといけないんです。
 よく子育て支援と言うけれども、その支援というのはどういう方向で出されるべきかというと、保育園をたくさん建てるとか金銭的な援助をすることではなく、親御さんの自己評価をみんなで育てていくということに尽きると私は思っています。
 親御さんが周りから十分認められてほめてもらえる。そしたら自然に子どものことを認められるようになるし、自己評価を高められるようになるんです。自分もオッケー、子どももオッケーというふうに変わってきます。
 そういう意味では摂食障害の人に限らないんだけども、だけど摂食障害の人であればなおさら、親御さんのがんばりを認めていく必要があるということなんですね。

<身近で自分のことをほめて認めてくれる人を一人は見つけてほしい>

―子育て支援の根本は、親御さんの自己評価をみんなで高めることに尽きるのですね。社会全体がそんな雰囲気になったらいいなと思うのですが、それは現実的にとても時間がかかり大変なことだと思うのです。今のこの状況で、個人個人でできることがあるとしたらどんなことができるのか教えていただけますか。

 まず、自分は自己評価が低いとわかったら、とにかく身近で自分のことをほめて認めてくれる人を一人は見つけてほしいですね。最終的には自分で自分をほめるしかないということもあるのですが、できれば身近にそういう人がいれば本当に一番いいんです。
 それが旦那さんだったり親だったりお姑さんだとベストなんですが、現実はそうじゃないことも多い。「もっとしっかりしろ」とか「あんたが甘やかしすぎるからや」とか言う旦那さんやお姑さんもいるので、そんな場合は、ママ友やネット上で繋がっている人で聴いてくれる人がいるならそういう人でもいい。
 あるいは、子育てサロンとか子育て支援センターとか保育所の保育士さんとか、そういう人たちの中に自分を受け止めてくれて認めてくれる人は絶対いるはずなんですね。そういう人を一人は見つける。
 ただ、そういうところでも批判的なことを言う人もいるわけですよね。
 自分に自信がないと、自分を否定する言葉はすごく信じられて入りやすいんですよね。そういう言葉にかぎって、本当に真に受けちゃうんですね。だからあえて批判的な言葉には耳を貸さずに、自分をほめてくれる人に話をして聴いてもらって、「よくがんばってるね」と言ってもらう。そういう人を一人は持っておきましょう。
 批判的な意見には距離を置いて「人は人、私は私」というふうに境界線を引けるといいですね。
 それと、やっぱり自分自身をほめるということも大事なことです。
 自己評価の低い人は自分のできてないところばかりに目が行くわけですよね。だけど、じゃあ全然できてないかというと、できてるところもあるわけですよ。
 たとえば、掃除はできてなくても子どものご飯作りはちゃんとやっている。冷凍食品やカップラーメンかもしれないけれど、少なくとも餓死はさせてないということはそれなりにやっているということです。
 80パーセントはできてないことがあっても、ちゃんと20パーセントはやってるよねと自分を認めてあげてもいいんです。
 ついつい我々は、できているのは当然で、できていないところばっかり目がいく。あれもこれもできていないというような見方をしがちなんですよね。それは子どもに対しても同じです。ついついできてないところばかり目がいって、ほかのお子さんと比べてこれもあれも駄目という。でも全然できていないわけじゃない。毎日ご飯を食べて毎晩寝ている、たとえばそれだけでも子どもなりにがんばって生きているわけですよ。だから、できているところをちゃんと見ていくということが一番大事なことです。

―できないところを指摘して責めるというのは、たぶん今の日本のみんなが身につけてきた生きる術という気がするのですが。

 そうなんです。学校教育というのが、できてないところを指摘してそれを直させるというようなやり方。聞くのは否定の言葉ばかりですよね。
 だけど、欧米は逆に、できているところをほめてふくらましている。すべて欧米がいいとは言わないけど、少なくとも日本の減点主義というのは違うのではないかなと思いますね。

―すごく、残酷というか否定的な言葉の中に「甘い考え方だ」という言葉があると思うのですが、摂食障害の人は特に、「できているところをほめたらいいよ」と言われてもきっと、「その考え方は甘い、わたしにはあてはまらない」と思ってしまう方が大半なんじゃないかなと思うんですが…。

 「甘い」という言葉を使う人というのは、自己評価が大事だということを知らないんです。しつけやルールが大事だと思っていて、その土台である自己評価の大事さを知らない。その重要さがわかればそういうことを言わなくなると思います。