トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 経験者の視点で語り合いました~あの(この)苦しみを、言葉にしてみよう in 金沢

摂食障害の基本知識 ~経験者の視点で語り合いました

辛いっていう自覚がなかった

*ここからは、いづ、ちい、yuiの三人トークです。

いづ : 後からになったらわかったけど、その真っ只中のときって、辛いという感情があること自体も気づいてなかった。
自分はすごく身動きとれないくらい苦しいのに、苦しくない状態を知らなかった。今みたいなこういう穏やかな感じがあるって知らなかった。
だから、この身動きとれないこの感じで一生いかなきゃって思っていた。
でも、そのときに、「今身動きとれてないんだ」とか「辛いんだ」とか、もし言葉にできてたら、ちょっと空気の風穴が通ったような気がする。

ちいちゃん : 客観的にその自分を見て、そうじゃないのもあるって見えたら楽になるよね。辛いときってココしか見えないし。言葉にできたら、楽になるんかな…?

いづ : 言葉にできて、誰かに伝えてたらまだ楽だったような気が私はする。
だって、いつもノートに「死にたい」とか「誰か私をなんとかして!」とか、書きなぐってたけど、それって本当は誰かに、親とか彼氏とかに見せたかったのかなって思う。Yuiさんは、辛いってこと自体わからないような感覚ってなかった?

Yui : …というより、人生は辛いものだってまず思ってたから。
辛くて苦しいことが沢山あるのが人生で、それを乗り越えていくのが、人として尊いことだみたいな、人としてあるべき道みたいな。
だから、辛いことが変だっていう感覚がないっていうか、『人生は辛いものだ』が自分の中の標準値になっているので、辛さをどうこうって思わないの。本当にとにかく、いつも焦燥感があって、カリカリしているんだけど、「楽になるためにはどうしたら?」なんて発想は全く、さらさらない。
私の場合は、自分一人身のときに摂食障害だったりいろいろやってたりするのはそれはそれで何とかなった。全てを上手くやってるつもりでいたからね(笑)。仮に自分がのたれ死んだとしてもそれはそれで…というのがどこかにあって、そんなにこの状況をどうにかしたいっていう切羽詰ったのはなかった。
でも子どもを持ってから、子どもにも『人生は辛いものだ』にしようとしちゃうから、子どもを苦しませないといられないとか、傷つけないといられないとか、そういうふうになったときに、はじめて切迫感を持ってこれはヤバいと思った。
それも簡単じゃないんだけど。ヤバいと苦しむ自分が自分にとって『人生このように苦しいものだ』という標準値なので、苦しまずに子育てするには?という選択肢が思いつかないの。
そういう自分に行き詰まって初めて「誰か助けて」とか「私はもうどうしたらいいかわかんない!」ってなった。

いづ : 誰かに伝えた?助けてとか。

Yui : 夫にはけっこう暴れたけれど、夫は実感を伴ってそれをわかることは当たり前だけどないし、夫って健康的な人で、べったりしてくるところはないのね。
大げさに言ってもそういう作戦にのってくる人ではなくて、話はちゃんと聞くけど、聞くだけっていうか(笑)。
私にしたら、彼をハラハラさせたくて、そのためにはもっとひどい事態を起こさないと彼は大騒ぎしてくれないのでは?と最初は思ってたんだけど、彼は子どもをすごく好きなの。本当に子どもが好きなんだな〜って思ったときにね、多分、私が子どもを利用して、何か夫をハラハラさせるような、そこまで卑劣なことをしたら、彼は私ではなく子どもを選ぶし、子ども連れて私から離れるなと感じたの。
それがわかると、子どもを徹底的に虐待するわけにもいかず、夫からは同情も買えず、でも彼に助けてほしいし、私が思いつく浅い作戦にものらない人だから、どうしようというのはすごく思った。
どうしようどうしようってなって、結局行き着いたのが、私は夫を操れないんだなってことと、自分でどうにかするしかないってことで。だから夫にも伝えはしたけど、病院に行ってみるとか、いろんな人に話すとか、思いつく限りのことをした。

いづ : 大騒ぎを起こすような、見せ付けるようなやり方っていうのは、結構私たちが陥りやすいというか…、私自身には身に覚えがある(笑)。それができない相手だったわけですね。

Yui : 本格的にやってみたことはないんだけどね。でも、やる前から、『彼には絶対通じない』と思った。すごくはっきりと。うん。絶対ダメだな。

いづ : よかったね。ラッキーだったね。
『辛いことを乗り越えるのが人生だ』って思い込んでいたというのも、そうだったなって思った。辛いが自分の中で標準になっているんだよね。ちいちゃんそんなのある?

ちいちゃん : 言葉にしてそういうふうに思ったことないけど、私の場合、辛いって自覚がなかったかな。今から思ったらあれは辛いよって思うけど、辛いって思ってもダメだとも思ってたし、これが普通だって思っていた。そんな中でみんなはうまいことやっているんだとか、それができない私は弱いとかっていう感覚だったかな。

いづ : 辛いって思ってなかったというか、自分が感じてる感じはすごく苦痛な感じなんだけど、まさに、それが普通だって感じなんよね。それ以外の、こういう穏やかな感覚とかがあるというのも知らなかったし。だから、それって二重に苦しかったというか、このままやっていかなきゃっていうのがあった。

ちいちゃん : そう、だから生きるのって辛かった。
「生きるのは素晴らしい」とかいうフレーズとかは全然そうとは思えなかったし、意味わからなかったし、無理やりがんばってそう言わなきゃいけないのかと思ってたし。

いづ : 私の中でこれはすごい発見!辛いのにそれを辛いって思ってなかったってことが、とっても辛かっただなんて。
世の中に溢れてるいろんな言葉とかが、健康な心の状態の人向けの言葉が、自分にもあてはまると思っていたというか、今から考えると、どうみても心は健康じゃないし、辛い状態だったんだけど、それがわからないから、いろんなこと全部みんなと同じスタートラインに立たたなきゃと思ってたし、フルタイムで働かなきゃ人間として失格とか、コミュニケーションうまくないから自分はもっとそういう練習をしなきゃとか。
「生まれてきたことに感謝しましょう」みたいなフレーズに、全然感謝なんてできない自分をまたダメだと思ってみたり。
そういうのあったなって思い出した。

ちいちゃん : これが普通って思って生きてたけど、これじゃない生き方もあるんだって思ってふと楽になった瞬間とか、ありますか?

Yui : 楽にねぇ…。あるような気がするけど、すぐには思い出せない。

いづ : 私もあるような気がするけど。ちいちゃんは?

ちいちゃん : 私は金盛浦子先生という方の本を読んだときに、「えぇ」ってすごくびっくりしたのを覚えてる。本当にびっくりした。そんな生き方って!いろんなそういう本もあるし人もいるんだけど、私のはじめて踏み込んだそういう世界は金盛先生で、すごくびっくりしたのを思い出した。

いづ : でもこれを読んだからといって、すぐに、辛くないほうの自分を体感するってことは、それはまた時間がかかるんだよね。私はやっぱり、楽になってはじめて、あの頃は辛い状態だったんだって自覚できたなあ。

Yui : 私、ふと軽くなったということはすぐには思い出せないけど、二つ思い出したことがある。
一つは、ある人のことなんだけど、私が苦手な人がいたの。すっごくオープンで細かいこと気にしない感じで裏表がない人なんだけど、なんていうかな、公式な打合せの場でも自由に振る舞から、チャラチャラして見える。そう、きちんとしてないの。で、私は『こういう人にだけはなりたくないな』くらいの感じで(笑)その人のことを見てる。でも、何度も会って、私自身がその数年間に変わってきて楽になってきてみると、その人のこと全然イヤじゃなくなってるんだよね。
もう一つは、やはりもう何年も前に、夫と会話をしてたときのこと。
話の筋は忘れたけど、夫が「それって上だよね、下だよね」みたいなことを言ってね。それを聞いたときに「上とか下とか、どうしてそう評価的な言い方するかなぁ。辞めてよ」とかなんとか、私が言ったんだったと思う。そしたら、「僕は、30センチのものを30センチって言うように、上とか下とかの単語を使ってるだけだ。上や下に評価的なニュアンスを含めているのは、僕でなくて、君だろ」って言われて。そう言われたときに、なんの悔しさも反発心もなく、「ホントだ。…そうだ!」って思ったの。
言葉を使う人がそういう意図で使ってないものを、私が勝手にそういうふうに感じ取って、「ああいうニュアンスで話す人って嫌だわ」とかって、私が勝手に思ってるんだってわかって、すごい衝撃だった。

ちいちゃん : 私も今衝撃受けた。(笑)

Yui : そういうことが何度かあって、だから私は夫を健康的な人だなーと思うんだけど。彼は言葉は言葉の意味としてだけで使う。

いづ : 率直ということかな?

Yui : うーん。こちらが「これで汲んでよ、頼むから」っていうところも汲んでくれないし非常に気は利かないよ(笑)。優しくないわけじゃないけど、「わかってよ、これで」っていうところも全然わかんない(笑)。でも言えばそのままに伝わる。
彼からあの指摘をされたときに、私の中に、ものさしとか、使っていい言葉使っちゃいけない言葉っていう区別とか、評価のまなざしがあるのであって、それを私は他の人に自分が勝手に投影しているだけで、みんなは実はそうは思ってなかったのかもってことに、気づいたんです。

いづ : 今は、上とか下とか言う人の言葉を聞いても腹を立てない?

Yui : 前ほどは立たない。「あれは絶対そういう意味を込めて上から目線で言っているな~」とか勝手に思うことはあるよ。でもその思いは、私自身が産んでるものだっていう気づきもあるから、自分の腹の中に留めるし、それはできるようになってきた。

いづ : 私が一番嫌な感じを受ける言葉に、まさにその、上とか下とか、優劣を言うような言葉があるんだけれど、今その話を聞いて、「あ、私がそう見てるだけなんだっけ」って混乱してきたなあ(笑)。
パートナーとか彼氏とかが、健康的な感じの人で救われていった人の話は結構聞くよ。不思議だなあと思うのは、どっちかというと、共依存に陥りがちというか、同じように苦しい人にひかれたり、不幸そうな人にひかれるとかいう傾向がある人が多くない?それなのに、旦那さんが全然振り回されない人で待っててくれたから助かったとか。放っておいてくれたから助かったとか、旦那さんには心の闇がない人だとかいう話も結構聞く。

Yui : 私は運が良かっただけだと思う。もしどっかの段階でできちゃった結婚とかしてたらこうはなってなかった(夫と結婚できていなかった)。