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研究レポート・学会報告
~2010年ザルツブルグ国際学会レポート(野村佳絵子さん)

Sisterhood Committee

 私はProgram CommitteeとCommunication Committeeのほかに、もうひとつ、Sisterhood Committeeという役割を担っている。これも月に一度、電話会議が開催され、各国の研究者グループ、当事者グループ、家族グループで活動している人たちが互いに情報を交換し合うというものだ。そして、必要があれば一致団結して、啓発活動を推し進めていこうということになっている。ただし、この委員会は今年発足したばかりのできたてほやほやの委員会であり、まずはそれぞれの活動団体が何をしているのか?どういうメンバーで活動しているのか?そこでの理念は何なのか?ということを共有せねばならない。今回はそのための第1回顔見せ会議という位置づけであった。

 会議そのものは、先の会議と同様、朝8時からブレックファーストを共にしながら、というものだった。しかし、私は7時半に一人だけ呼び出され、またしてもドキドキしながら会議場へ向かった。「一人だけ呼び出された」ことに、緊張感と高揚感でいっぱいになっていたので、日本のお友達が心配して私にどら焼きとせんべいと日本茶を持たせてくれた。何かあったら「ジャパニーズパンケーキ」と「ジャパニーズクッキー」で乗り切ろう!今日の会議場は、前日のブレックファースト会場よりもさらに立派な部屋、パンやコーヒー、紅茶の種類も多かった。さて、どら焼きが通じるだろうか???

 呼び出しを受けた私を待っていてくれたのは、この委員会のリーダーDiannAckardと、学会長Susan Paxtonだった。DiannともPaxtonとも、それまでメールでやりとりしていた仲ではあったのだが、2人とも私の活動や考えを直接聞きたかったとのこと。「ああ、だから朝早く呼び出されたのか~。」私にしてみれば、なんとも乏しい会話力での説明よりも、メールを通じて書き言葉で説明する方が伝わりやすいだろうと思ってのことだったが、直接顔を合わすと合わさないではやっぱり違う。とは言うものの、もしかすると言いたいことの10分の1も伝わらないかもしれない・・・など不安は渦巻く。

 しかし考えてみれば、言いたいことなど10も20もあるわけもなく、自分がこれまでやってきた確かな事実がひとつだけあるのだから、それを伝えればよいのだ。開き直ってべらべらしゃべり始めると、2人はたくさんうなずきを示してくれる。一所懸命に私の話を聞いてくれる。言いたいことがうまく言葉にならず、ボディランゲージまかせになってしまいがちな場面では、「ゆっくり、ゆっくり、落ち着いて」とサポートしてくれる。いつのまにか私は、「当事者のみならず、家族、専門家、周りの支援者をつなぐ重要性」を懸命に強調していた。そして、この視点は委員会ではこれまで議論に上らなかった「新鮮かつオリジナルな視点」だと言われた。私にしてみれば、当然だと思っていたことが、「新鮮」なんて言われると、ちょっとびっくりした。「当事者のみ」「家族のみ」「専門家のみ」というグループならたくさんあるが「一緒というのはびっくり!」という意味らしかった。(そりゃ、あまりに「それぞれ」を強調しすぎるとどうしても排他的になってしまうよね~)。

 それはともかく、私はこれまでの経験上、リーダーや学会長さんっていうと、特に学会が開催されている最中はほとんど動きっぱなしで、全体を見渡す役に徹しているため、一人ひとりと会話する時間なんて許されないだろうと、勝手に思っていた。しかし、「うわ~、会長直々に朝早くからあいさつをしに来てくださるなんて・・・」。Paxtonは、どこにも偉ぶる様子はなく、むしろ、「朝早くから呼び出してごめんね」とか「日本からのフライトは長かったでしょう」とか、逆に私を気遣う言葉の数々をかけてもらうことになった(彼女もオーストラリアだから、十分ロングフライトのはずなのに・・・)。権威主義的な私は、舞い上がりっぱなし。

 しかも、Paxtonは、目下私が一番のテーマに掲げている「予防」研究の第一人者でもある(私は恥ずかしくも、そのことを知らず、先のどら焼きを持たせてくれたお友達から聞いたのだった。オーストラリアは予防研究・実践ともに進んでいるらしい)。昨日の自由報告オーラルの部でも、ミドルエージへの予防的介入について最新の検証結果を発表していた。学会長だろうが何だろうが、研究への真摯な姿勢は変わらない。やっぱりそうでなくっちゃ!私は、彼女にオーラル報告の感想を伝え、「私も最近、予防に取り組み始めました」みたいな話をすると、「何でも協力するわよ!遠慮なく言ってね」と、なんとも優しいPaxton。うれしい~。日本へPaxtonを招こう!そしてシンポジウムをしよう!と、またひとつ、私の夢が芽生えた。

 ほかのメンバーたちも続々と会議へ訪れる。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、メキシコ、オランダ、ドイツなど。ほかにももっと活動している団体はあるはずだろうが、今回集まったメンバーは約20名だった。今後、情報交換を活発化させていきながら、おいおい交流を深めていきましょう!とのこと。そのためには、まずは電話会議とネット会議、ホームページでの情報発信から始めましょう!と。目から鱗状態の発見があった会議内容ではなかった。逆に言えば、目から鱗みたいなものをあらためて開発する必要はなく、今あるツールを上手に活用できるように、その中身を考えていかねばならないよね、といった内容の話だったのだ。「日本は遅れてる」わけではけっしてない。どら焼きもせんべいも大好評だった。

Diann

Paxton