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研究レポート・学会報告
~2010年ザルツブルグ国際学会レポート(野村佳絵子さん)

メディアトレーニング

  学会初日はClinical Teaching Day。いくつかの選択肢の中から希望する部会を選ぶ。私はメディアトレーニングに参加した。理由は3つ。

 ひとつめは、この部会の主宰者が、私のお友達Theresa Fassihi (Owner at Theresa Fassihi)とKitty Westin (President of the Anna Westin Foundation)だったから。Terryは心理士、Kittyはアクティヴィスト。数年前の国際学会でお友達になって、Communication Committeeのメンバーとして、ともに活動を続けてきた仲間である。2人ともすごいパワーの持ち主。フランスのやせモデル登用への抗議文を示したり、スペインのやせモデル規制緩和へ賞賛文を送ったりしている。もちろん、それは単なる感情表現でなく、会議で議論を重ね、理路整然と筋道を通し、「おかしいものはおかしい」と論理立てて訴える方法である。そんな中に身を置いていると、日本ぐらいだよ~。パソコンでラインをいじったモデルさんのポスターを恥ずかしげもなく堂々と掲げ、いまだ「細ければ細いほどいい」みたいなメッセージを垂れ流しているのは・・・、と思う。(もちろん、それを何の疑いも持たずに「消費」している私たちがいるのも、もうひとつの事実だけど)。

 メディアトレーニングへ参加した2つめの理由。私はこれまで幾度かテレビや新聞・雑誌の取材を受けることがあった。インタヴューを受けるたびに、私の物語は変化しているが、いつも気になるのは、私が話したことを聞き手はどんなふうに受け止めるのか?どんなふうに綴るのか?それを目にした聴衆は何を感じるのか?といった点だ。誰かを傷つけていないかな?私の言いたいこと、ちゃんと伝わっているかな?写真はきれいに(!?)撮れているかな?など、不安でならない。トレーニングを受ければ、そういった不安を解消できるかもしれない。そんな期待もあった。

 3つめの理由は、摂食障害をとりまく昨今の日本のメディア事情を鑑みて、である。とりわけ、数ヶ月前、五輪フィギア代表の鈴木明子さんを取り上げたNHKの朝7時のニュースには耳をダンボにし、目を皿にした。「え~?朝の7時のニュースで摂食障害が取り上げられるなんて!しかも、民放じゃなくって、公共放送で!」摂食障害が知名度を上げたのか、公の場で摂食障害を語っても許される社会になったのか、とにかく私は驚くと同時に、うれしさ、そしてこれを機に本当に正しい知識が広まるとよいのにな、と期待に胸を膨らませた(それまでのメディアを通じて流されていた摂食障害の偏った報道の仕方には怒り浸透だったから)。

 さて、メディアトレーニングの中身はどうだったか?TerryとKittyのファシリテータのもと、参加者5名は緊張しながら、それぞれメディアにまつわる経験を交えて自己紹介。「ん?これって自助グループみたい」と、感じた。2年前のメディアトレーニングの際には、受講者が30人ぐらいいたのだが、今回は学会の開催場所の影響からか5名のみ。うーん、さらなる緊張感が増す。しかしながら、カチンコチンになってお行儀よくすわっているのは私ぐらいで、ほかの人たちは気楽な様子で足を組み、コーヒーカップを片手に、初対面にもかかわらず(国も違うのに!)、もうすでに和気あいあいとお友達になっていた。そして、多くは、自身がインタヴューや取材などを受けた際に、困ったことや不安に思ったことなどを口にしていた。「言いたいことがたくさんあるのだけれども、短時間ではうまく伝わらない!」ああ~、それは同感。

 ひととおり、自己紹介が終わったあと、TerryとKittyがコメントをくれる。その後、「では、どうすればよいか?」についてのレクチャーが始まった。それはひじょうに実践的かつ合理的な内容だった。

 インタヴュアー(インタヴューを聞く人)は摂食障害についてほんのわずかな(偏った)情報しか知らない。インタヴューイー(インタヴューを受ける人)であるあなたは摂食障害の専門家である。だから、あなたの背格好、立ち振る舞い、服装、しぐさ、目線、つまり外見が、まずは摂食障害についての印象(知識)を良きにせよ悪きにせよ生み出す可能性が大いにあり得る。あなたはくれぐれも外見で誤解を与えぬよう、服装と姿勢を整える必要がある、といった内容。スーツの下に着るシャツはストライプがよいか、水玉がよいか。スラックスと靴の間から見える靴下は何色がよいか。女性であれば、ストッキングは肌色、アクセサリーは光ものダメ、とか。服装のほかにも、目線はどこを見ればよいか?繰り返し使う単語(特に動詞)には気をつけること。そうそう、あーたらこーたら、うだうだしゃべらない。人間の集中力はそんなにもたないから、先に結論ありき。1センテンスは20秒ぐらいで話すこと。インタヴュアーの顔やカメラをじっと見つめちゃいけないよ、とか。へえ~、面白いなあ。メディアトレーニングって、こういうことを学ぶのか~。意外と簡単かも!

 そして実践編。TerryとKittyが交代でインタヴュアーになり、参加者がインタヴューイーになって、20分ずつロールプレイする。皆、苦戦した。しゃべりだしたらとまらない。うだうだうだうだ、あーだこーだ自論を唱えたがる。それもインタヴュアーの顔を真剣に見つめて。「それではあかんよ!」。見てるだけなら言える。けれども、いざ実際に自分がマイクを向けられると、とたんにダメだ。視線も姿勢も見られたもんじゃない。

 メディアを通じて作られる摂食障害。これはまた、正しい知識を伝える際にも問われる事柄である。メディアの影響力は測り知れない。だからこそ、逆にそれをうまく利用する方法を学べば、きっと日本でも大規模な啓発活動へと発展させることができるだろう。トレーニングの最後には、そういったメディアの倫理面についても学んだ。もちろん、こつこつと地べたを這いつくばった啓発活動との両輪が必要だけれども。

Members of Media Training

EeLian