トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.2文化人類学者 磯野真穂さん

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

さいしょは自分自身が治療モデルの枠組みにハマっていた

-15年間やってみてどうでしたか?

 実は自分自身が治療モデルの枠組みから出るまでにすごく時間がかかった。

-それはどういうことですか?

 結局さっき出たいわゆる「原因は?」っていうあの思考からまったく抜けられなかった。

-へええ!

 だからシンガポールに行ったときも「社会的要因」という部分に時間を費やしちゃって…。そこから自分自身がそこにハマってるって気付くまでにたぶん10年以上かかった。そのぐらいわたしの中にも刷り込まれているモデルだったの。これは病気である、治すべきものであるって。

-じゃあ最初の10年間は治すべきものという前提で…

 そこまで考えてなかっただろうけれどそれは頭にはあっただろうね。要因を考えてたってことはたぶんそう。で、ある時インタビューをしていて「なんでこの人は美味しいって言わないんだろう」ってふと思って。こんなに食べ吐きして食べることに興味があるのに、食べてるときの話で美味しいってでないよなって。そういえばそれはどうしてだろうって。

-素朴な疑問が浮かんだんですね。

 すごく食べ物に興味があってあんなに食べ物のことばかり考えてるのにいざ食べるときになったら全然美味しそうじゃないんだもん。ヘンでしょ?

-で、なんでキャベツじゃ過食できないのかとかそういう「食べ方」みたいなところにどんどん…

 最初は相手にされませんでしたけどね。まあ今でもそうかもしれないけれど(笑)。インタビューしていたその語りがわたしに向こうから提示してくれた何かですよね。抜け出るきっかけを教えてくれたのは。

-それこそ当事者から学ぶっていう…

 まさにそう。

-その疑問から始まって、そうか!食の準拠点がローカルじゃないんだ!って…

 そこに行ったのは、美味しいって感じられたりとか心地よさを感じる時には自分自身の身体とある種いい感じで向き合っている時なんですよね。だけどそれを全然できなくなっちゃってるんだなって話を聞いていったらすごいわかって。今ここにある自分というところに自分を置けないという状態なのかもしれないと。

-文化人類学を始めて最初に取り組んだ摂食障害というものを、15年かけて文化人類学の真髄というか本質のところに行きついたんですね。

 やっぱり最後の最後に残ったアプローチっていうのは文化人類学の定石である文化相対主義です。いい悪いをつけずにただ単純にそこで起こっていることを丁寧に読み取っていこうというアプローチ。これがやっぱり最後に残った。