トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.2文化人類学者 磯野真穂さん

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

他人の指標から自分の心地よさへ

 わたし思うんですけど、摂食障害の大変な人がカロリー計算したり、体重測ったりするのはやめたほうがいいんじゃないかな。3カ月ぐらいやめてみたらいいのにって思う。

-気が狂いそうになるかも…

 気が狂っちゃう?そうか…。なんかわたし意識的にそういうことをしていて思ったことがあるんだけど、体重を気にせずに食べてる時って、肉を食べてなかったら肉が食べたくなったり野菜を食べてなかったら野菜を食べたくなったりして、これが身体知なんだろうなって思って。

-身体知ってそういうことも含まれるんですね。

 そういう意味でもわたしは使っていて、たとえばお腹がいっぱいになったらもういいかなとか、そういう、そんなに自覚しないでもいいコントロールが身体には備わっていて、たぶんちゃんとその人それぞれのちょうどいいあたりってあると思う。そのちょうどいいあたりで自分の身体がやってきたのを、常に自分の身体を外から見て意識的に苦しい調整をしようというのは相当苦しいと思う。自分がもともと持っていた身体知を取り戻そうとするときに、混乱は起きるかもしれないけど、やめちゃうっていうのはありだと思う。でも狂っちゃう?

-計るのをガマンするってのはやっぱり気が狂いそうになるかな…。程度にもよると思うけど…

 だからほんとに体重という数字に準拠してるんでしょうね。体重が人生の目的になっちゃっているとそうなのかもしれない。ある種イチローがバッターボックスに入ったらまったく同じことをしないと気がすまないみたいに、体重を気にして生きることがルーチン化しちゃってるわけでしょ。そういう完全にルーチン化しちゃったものを元に戻すには最初の始動ってのは大変ですよね。

-ルーチン化しちゃったほうのそちらが身体知になってしまっている。

 わかるわかる。

-入れ替える必要がある。

 慣性だな…。一番初めの始動は一番物理学的に力が必要だけれど動き始めてしまったらもう力はいらない。だからたぶんほんとに苦しい、狂っちゃいそうっていうのは一番初めのところなんでしょうね。だからそこさえ回っちゃえばあとは慣性。ボーリングの球みたいにまずは転がしてしまう…。数字に準拠させるのを意識的にやめるのが難しかったら、とりあえず情報を少し斜めから見てみる。ちょっと小ばかにしてみる。

-そっちはまだできやすいかも。

 じゃあとりあえず小ばかにする。小ばかにする中でほんとにこれ必要かなってことを考える。ダイエットがいけないとは思わないし綺麗になりたいのがいけないとも全然思わないけれど、ただそこに準拠点が移り過ぎていると苦しいだろうし、常に他人の評価の中で生きることになる。

-ご著書にも何度も書いていらっしゃったけど、他人の指標の中で生きることにハマってしまっている状態なんですよね。

 自分の心地よさの中で生きるっていう感覚を完全に忘れちゃってる。「個」よりも先に関係性を置いた場合、たとえばあの人と話したら心地よかったなとか、失われてしまった心地いい準拠点が戻ってくるわけです。あなたが生きる場がどこにあるかって考えたときに、今あるこの関係性の中を生きようと思えば外からなんて見えないわけです。で、その瞬間にもし少しでも心地よい瞬間があったならばそれは本当に今この瞬間に自分の身体とともにあるということなんです。その瞬間を増やすためにはわたしはいわゆる自助グループみたいなものは有効だと思います。心地よいポイントを今現実にあるネットワークの中に見出せるかですよね。しかもそれをするときに自分の身体よりも関係性が先にあると思ったほうがラクだと思う。

-ふむふむ