トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.2文化人類学者 磯野真穂さん

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

自分の身体や個よりも先に関係性がある

 自分の身体とか自分の個よりも先に関係性が先にあるって考える。

-ほお…

 つまり、自分の身体がうんぬんかんぬんっていう話では常に自分の個が先にある。だけどそもそもわたしたちは関係性の中でしか生きていけないので、関係性が先にある。たとえばそれは自分の大事な人との関係、親でもいいし友人でもいいし先生でもいいけれども、その関係性の中で心地よくなるには自分はどう繋がったらいいのかなっていう考え方です。もしこの関係性の中で自分が心地よく生きたいとするならば、食べ物のカロリーを計ってやせようとすることが大事なのか、それともこの目の前の人と言葉を交わすことが大事なのかって話です。

-つまり現実問題ちまたの情報では、やせたらモテるしそうするといい人とお付き合いできたり結婚できる、そうすると幸せになれるみたいなイメージがあるけれど、実際に目の前の異性を見たときに本当に自分がやせてることでそういう関係になれるかどうかという視点や、本当にそういう関係が幸せなのかという視点を持つ、現実の視点を持つみたいな…

 そう、リアルな関係性ってところを先に置くんですよ。実は「個」にものすごく着目させる思想ってすごく近代的なんです。近代になる前の社会って見てくと「個」はものすごくゆるくて、関係性に応じていかようにも変わる「個」なんです。今の社会って「自分らしさ」とかってものすごく強調するんですけど、「ありのままの自分」なんてあり得ない。やっぱり人はどんなときにも役割を背負っているわけですよ。役割を背負っているのは別に特殊なことではないので無理に「ありのまま」を見つけようとしなくていい、自分らしくしなくていいわけですよ。自分って言うありのままの存在があって初めて関係性を結べるっていう考え方をひっくり返す。関係性があってその関係性によっていかようにも変化する自分のほうがありのまま。そう捉えるとラクじゃないですか?で、そういうふうに関係性を先に置いていくと、不飽和脂肪酸だとか血糖値だとかそんなに重要なんですか?って話なんです。明日の自分の身体をどうしたいのかではなくて、今ここにある、たとえばわたしといづさんとの関係をどうしたいのかって考えたときに、このカフェラテが300キロカロリーあるとかそんなことは関係ないわけですよ。いわゆる心理学的生物学的なアプローチだとどうしてもまず「個」を見ましょうとなるわけなんだけど、そもそも先にあるのはあなたではなくて関係性なんです。そういうふうに捉えると周りから入る身体へのメッセージってそんなに重要なのかな?ってなりませんか?

-すごいすごい、ほんとや…

 結構がんばって考えてきたんだけどどうかな、ダメかな?(笑)

-いや、すごいと思いました。それは逆に言うと、目の前の人と生身でコミュニケーションするってことが何らかの理由でできんくなったところから数値の世界への移行が始まってるとも言えるなって思いました。

 で、治していこうっていうアプローチは今のところ、認知行動療法にしても対人関係療法にしても「あなたを変えましょう」というスタンスなんですよ。でもそもそもあなたではなくて、あるのは先に関係性であってあなたは先ではないわけなんですよ。で、もし関係性を取るのは嫌だ、食べ物と対峙して生きるって生き方があるとするならわたしはそれでもいいと思う。あなたが決めた生き方なんだから。でももしそれが嫌なんであれば、身体よりも先に関係性がある、という捉え方をしてみる…。あえてがんばって考えるとすればこんな感じかな(笑)。

-ありがとうございます!