トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.2文化人類学者 磯野真穂さん

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

楽になる方法をあえて考えるなら、自分の身体と共にいることを提示したい

 「摂食障害」は現象としては似ていても、それに到達するプロセスって10人いたら10人違うと思う。それを現象が同じという理由でひとまとめにして「摂食障害」と名付けそれに対応する治療法がありますっていうこと自体わたしはなんかヘンだと思う。だからわたしはあんまりこうやったら治るとかこうしたらいいですよっていうのは言いたくない。それは現実を捉え損ねていると思う。

-うんうん、磯野さんがこの本で伝えたかったことはこうしたらいいとかそういうところではなくて、一つの視点みたいなものを提示してくださってるんやなって思って読んだからここ(Q1とQ2のこと)はすごい欲張りな質問やなという自覚はあるんです。でも一当事者として、こういう視点をお持ちの磯野さんやったら例えばどんなふうにイメージなさるのかなというちょっと純粋な興味からです。

 まあ、でも考えてきました(笑)。

-わあ!やったあ(笑)。たぶん本を読んだ楽になりたいって思ってる人はたぶん「じゃあ磯野さん、わたしどうしたらいいんやろう」って思うと思う。

 解決法は提示できないので、本人がいいとこ取りをして応用して自分なりの解釈をしてくれるのがわたしはベストだと思う。いわゆる体重に捉われていたり過食の人たちって体重に救いを求めてみたり食べ物に求めてみたり、救いをアウトソーシングしてしまってるじゃないですか。助けを外に求めてしまう。家族モデルにはまってみたりとか。そういう風にすること自体がちょっと問題だと思う。自分である程度見つけていくのがわたしは究極だと思う。

-ちまたにそれこそいっぱいある治療法の本とか情報とか、これのいいところ、この自分に合いそうところっていうふうに貪欲に組み合わせていく…

 というか、むしろバカにするぐらいがちょうどいいんじゃないですか?

-バカにできたらもうそれは楽になってるってことだと思う(笑)。

 なるほど(笑)。そういう前提の上であえて言うならですけど、「自分の身体と共にいることの重要性」は提示したいと思います。

-それは具体的には?

 本に書いたこととも関わるけれど、自分の身体を外の視点から捉えるのではなくて自分のものとして捉える考え方が大事だと思う。たとえばカロリーとか体重とかで自分を見てみるのもいいんだけれども、カロリーで食べ物をとらえないときの自分はどうやって食べていて、そのとき自分はどういう感じがするのか。体重のことを考えない時、自分はどういう感じがするのか。言い方を変えると、自分の身体を他の指標に預けない。「食のハビトゥス」っていうのは言ってみれば環境と共に食べながら生きていくための身体知なんですよ。ちっちゃいときから食べ方について繰り返し学び、知らないうちに自分の社会環境と共に食べ、自分を生かすっていう方法をわたしたちは身体の中に溶け込ませているんだけど、摂食障害に陥った人は、それを簡単に手放してしまっている。それは自分の身体と共にいないってことだと思うんですよ。自分の身体を外から見続ける。それをやっているとすごく辛いと思う。

-自分の身体と共にいるっていうのはすなわち「食のハビトゥス」を流出させていないということとイコールですか?

 厳密にいうと違いますが、大枠としてはそんな感じでいいと思います。

-「食のハビトゥス」が流れ出た状態っていうのがすごい辛いと思うとおっしゃったのはどうしてそう思いますか?そういう経験がありますか?想像ですか?

 ダイエットとかしてたときはそういう感じだったと思う。常にこれは何カロリーだろうとかこれを食べたらどのくらい太るとかそういう思考でいるからある種自分の心が未来にいっちゃっている。だから自分の今ここと一緒にいられない。常に自分は未来にいて警告を発するみたいな状況になって今ここの自分の感じ方を封印しちゃうから、そういう状態に陥らないことはすごく重要だと思う。だからわたしはあまり体重を計らない。カロリーとかも見ない(笑)。

-あはは(笑)

 たまにはいいけど、そういうことばかりをやって生きてどうするの?って思う。そういうことを気にすることで自分の身体を常に監視するような状態で生きていてもわたしは全然楽しくない。それよりもむしろ、自分は今ここで何を思っているのかを大切にしたいから。

-それが磯野さんがおっしゃる自分の身体とともに生きるということなんですね。