トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.2文化人類学者 磯野真穂さん

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

★『なぜ、ふつうに食べられないのか』で語られているポイント★

●「ふつうに食べられない」状態とは、他者ともっと豊かに繋がりたいと願った人たちが結果的に食のハビトゥス(※1)を流出し、すなわち他者との紐帯を豊かにしていく術を失い、願いとは逆の方向に陥っている状態である
●「個」を「治療」しようとする医療は自然科学的な時空間、専門的言説の時空間にあり、食の準拠点(※2)がローカルな時空間から消えていることに注目していない。そのアプローチはともすると本人が陥っている苦しみに拍車をかける可能性もあり得る
●社会文化的なマントをはぎとったところにある「個」の問題としてこの現象を位置付けようとする視点ではなく、現在の社会がどのように個々人の食に影響を与えるのかを深く見ていく必要性がある

※1「食のハビトゥス」
ハビトゥスとは、ありふれた行動が、当たり前にできるために必要となる様々な知識が身体化された状態(身体知)のこと。たとえば食に関して言えば―
・イスとテーブルがあるレストランでは床には座らずにイスに座って食事をとる
・ピクニックの場合は近くにベンチがあったとしても芝生の上に座って食べることもおかしなことではない
このように何をどうやって食べるかは、実は場面場面に応じて細かく決められている。しかし私たちは、その場その場に応じて、どのような食べ方が適切かを瞬間的に判断することができる。これを可能にしているのが食のハビトゥスであり、それがあるからこそ、他者とともに食べ、その他者と社会的な関係を作り上げていくことが可能になっている。

※2「食の準拠点」
錨を下すことで、船が海の中でもある程度安定するように、食もある場所に錨が下されていることである程度の安定を保つ。これが本著でいう「食の準拠点」のこと。拙著では「食のハビトゥスに準じて食べること」イコール「日常生活の中に食の準拠点を置いて食べること」としており、ふつうに食べられない人たちは日常生活というローカルな場ではなく、体重やカロリーといった自然科学の時空間や、原因は母親のせいというような専門的言説に食の準拠点が移動している、と捉えている。

★事前にお伝えしていた質問事項★

Q1.一当事者の経験から、「ふつうに食べられない状態」から楽になるために、
 ・社会・文化とは絶対的なものではなく、自分のものさしで感じ取り選んでいい(現在の医療を疑うことも含め)と本人が腑に落ちるためのアプローチ
 ・そのために「自分の感覚」を受け入れたり誇りを取り戻すためのアプローチ
のように「個人」に目を向けるアプローチで有効なものもあると感じます。たとえば身体の感じを注意深く探って言葉を見出す「フォーカシング」、認知をより楽なものにしていこうとする「認知行動療法」、人間関係に目を向ける「人間関係療法」、自分の気持ちを表現する「自助グループ」などについてどのようにお考えでしょうか。

Q2.これはとても欲張った質問ですが、ズバリ磯野さんは「ふつうに食べられない人たち」がより楽になるための方法について何かイメージがおありですか?流出した「食のハビトゥス」をふたたび取り戻すことでしょうか。そうであれば具体的に何をしたらいいのでしょうか。

Q3.そもそも磯野さんが「摂食障害」に関心を持ったり、もっと言えば「文化人類学」の世界に身を置いていらっしゃるのは果たして何を探求したいと願っていらっしゃるのでしょうか。現在のご研究の内容も踏まえてぜひぜひ教えてください。