トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 いろんな人に聞いてみよう!vol.1徳法寺 杉谷淨ご住職

摂食障害の基本知識 ~いろんな人に聞いてみよう!

あなたの苦しみは絶対に無駄にはなりません

 ―摂食障害を経験して10年ほどになりますが、回復していくまですごく長く、辛く感じていて、当時苦しい中でも受け容れていくことが大事なんだと頭でわかってみたりはするでんすが、実際に受け容れるのがすごく大変で、「これでいいや」となかなか思えない。

杉谷淨ご住職  そう思います。それがスッとできればお釈迦さまなんで、できる方はすごいです。なかなかできなくて当たり前。小さいときから思い描いていた自分の将来になかった道なので、そんなに簡単に回復するわけがない。指をケガしたというレベルじゃなくて、回復までに何年もかかることになると、後の人生設計がダーッと変わってくるので、落ち込んで当たり前なんです。でも、落ち込んでもちゃんと生きている。ちゃんと目は覚めるし、それなりに生きてきて、周りの人が支えてくれているという状況は変わりません。自分だけもがいてしまって、絶対に登れない坂をあがいて登ろうとしているのかもしれない。それに気づく時がある。あがける元気のあるときは、あがいてしまう。

 仏教の先生に言われたのは、落ちたらいかんと思って一生懸命しがみついていたのに、手を離したら10cmほどしか落ちなかった、「ああ、これだけやったんか」という話です。それに気づかないで、必死でしがみついている。それはプライドであったり、これだけは譲れないと死守していたものが、実はなんてちっぽけなものだったんだろうと気づくのが「諦」です。それを悟りと言います。でも、あがいている最中の方に「手を離してみたら」と言っても離さないでしょう。ここで離したら終わりじゃないかと思うからです。でも、実は終わりでも何でもなくて、そこから始まるものがある。どこかで手を離してみたら、案外行けたりするわけです。「別にみんなと一緒にならなくても大丈夫」「私には私の役割がちゃんとある」と思って、それを一歩でも半歩でも進めていくと、自分の後から来る人がちょっと楽になれる。

 ―自己否定感がいっぱいあると、諦めることができない自分をまた責めるとか、そこに行けない自分を責めるとか、そういう思考回路になります。でも、その模索自体があなたの使命なんだよとか、広い目で見ると、起こっていることは必ずしもいいとか悪いとかじゃないんだよということを聞くと、救われるかもしれませんね。

 無理しなくて、本当に与えられたわずかでいいんです。それこそ一生涯かけて半歩でも進めれば、後の方にとっては大事な道です。目に見えるような結果を残すところまではする必要もないわけで、一歩一歩で十分なんです。今、摂食障害という言葉が生まれてきたのも、多分過去からのそういう方々の歩みがあったからですよね。決して自分がいきなり来たわけではなくて、たくさんの方がそうやって生きてきた結果が、今ここにある。その道を大事にして、後は任したよと先につないでいければいいなと思います。

 ―ありのままの自分自身を受け容れること、そして今自分の身に起こっている摂食障害を受け容れること、「受け容れる」について2つの方向性をお話くださったと思います。そして、受け容れるということはすなわち、次の人たちに繋ぐという動きにも繋がっていくということですね。最後に、今摂食障害を抱えておられる仲間の皆様へのメッセージをお願いします。

 決して方便じゃなく、本当に無駄じゃないんです。経験した人にしかわからないことは山ほどあるから、絶対無駄にならないのは事実です。それに気づかないで、要らんことばっかりしている、無駄な苦労、無駄な努力ばっかりしているというふうに錯覚してしまうんですが、そんなことないです。それに気づいてもらえればいいですね。あなたが最初じゃないし、あなたの前にたくさんおられたし、あなたの周りにもたくさんおられて、そういう方々の歩みの中にあなたの今の状況も絶対必要なんです。もしあなたが、世の中にたくさんいる摂食障害の方の中で一番辛い思いをしているとしたら、その声を出すことで、またたくさんの方が救われる。だから、あなたの苦しみは絶対に無駄にはならない、ということです。また、そういう方と触れてみると、自分だけじゃなかったし、後から来る方の助けになれるのは自分しかいないと思えることもある。決して普通に働いてお金を得る仕事じゃないけど、あなたにしかできない仕事はある。それは世の中でマイノリティー、少数派の方に全部言えることですね。そのためにはエネルギーが要る。その力がわくまではゆっくり休んでいればいい。急がなくていい。力がついて、そろそろ自分もできるかなと思えるときに一歩踏み出せばいい。そのことをお伝えしたいなと思います。

 ―今日は大変貴重なお話をありがとうございました。