トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.8鈴木眞理さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

症状は必要悪。いかに身体に障りなく、というアプローチ

いづ : 今の実際の治療アプローチはどんなものですか?まず患者さんがいらしたら…

鈴木 : 精神科の西園マーハ文先生、臨床心理士の小原千郷先生と作った『診る読むクリニック』っていうDVD付の本(リンク)を読んでいただければアプローチもおわかりいただけるかと。診察に来るのが怖い人が多いので、「来なくていいからこれ見てね」って言えるような本です。体を守るために、内科的な合併症や骨粗鬆症などの後遺症を明確に数値で評価しています。体重と労作制限の基準は厚労省で決まっています。標準体重の何パーセント以下だと入院勧告やいろいろな制限があるけれど、ランクが上がれば制限が解けるのであれば1ランクぐらいは上げてもいいかな?って思えるような仕組みになっています。

いづ : 身体からのアプローチですね。その際には鈴木先生とのやり取りの中で心の部分も満足していく仕組みなのでしょうか。

鈴木 : 身体治療の目的は「救命、合併症と後遺症の予防、そして、脳機能を改善して心理的なアプローチが奏功する状態を作ること」です。緊急入院や労作制限の話ばかりで診療時間をつかうのではなく、患者さんの感じていること、悩んでいることなどに取り組むために、体が危険な状態を脱することは有意義です。では、体重の話ばかりで心理的は変化が起こりうるのか、というご質問ですよね。「健康な時と同じように食べることが苦手になって、できないことが多い」ことを理解したうえで、叱責したり、面倒くさがったり、嫌がったりしていないことが伝わること、次に、患者さんの体に起きていることを理論的に説明して、どうすれば改善できるかをお教えすることで、それができるかできないかは別として、特別な心理的アプローチをするまでもなく、医療者への信頼、あるいは、安心は得られると感じています。患者さんにどう寄り添えるかは次のステップだと思います。

いづ : 次のステップのいわゆる心療内科とか精神科のアプローチはどんなふうになさるんですか?

鈴木 : 2段階目までは内科外来でします。心理的アプローチですよね。たとえば「やせのメリットは何ですか」とお聞きして「安心できるから」とおっしゃる。それを「最大のメリット、やせのマジック」と共有します。「あなたも周囲も困っている変わった症状はあなたが悪いわけではなく、病気の症状」と病気を外在化します。さらに、治したい自分と病気のままでいたい自分がいることを確認します。過食嘔吐も下剤もすぐに止めろとは言わないんです。止めたほうがいいのは本人が一番知っているし、すぐに止められないから病気なのですから。一日の日課を書いてもらってここちょっと減らせそうと作戦を練ったり、嘔吐後の脱水や電解質異常の予防策を教えて検査データを比べたり、医療用の下剤を増やして市販の下剤量を少しずつ減らす計画を立てたりして、科学的なアプローチをします。そうすると本人の自発的な変化も見られ、2段目の寄り添いも可能だと思います。3段階目は認知行動療法や対人関係療法などの特別な心理療法や、コーピングスキルの向上ですね。これは臨床心理士や精神科とのチーム医療ですね。

いづ : 摂食障害は心療内科とか精神科で扱う病気というイメージがあるから、身体からのアプローチっていうのは今初めて具体的にお聞きして新鮮でした。

鈴木 : そうですか、こういう内科医は多いと思います。別に摂食障害を診てるって言わなくても。嘔吐や下剤乱用で腎不全になりそうな患者さんに、「3リットル吐くなら3リットル補充して」と淡々とアドバイスする腎臓専門医とか。嘔吐は病気とみなして対処を教えるっていう。

みか : わかりやすいですね。

鈴木 : 私も病気は必要だからやってるだろうって思ってるんですよ。

いづ : それは嬉しい。それはすごくしっくりくるんです。必要なんです。

鈴木 : 必要悪なんですよね。止められるもんなら止めているか減らしているはずなんだから、今はニーズがあるからしょうがないんですよね。それをいかに身体に障りがないようにするかをお手伝いするアプローチなんです。内科ですから。

みか : そういうアプローチを続けていくと過食が減ったり無くなっていく…

鈴木 : もちろん。症状を責められている間は患者さんの協力は得られませんが、必要悪だと認めてもらえると協力的なスタンスが出てきますよね。ここまでがんばって吐きませんでしたとか。