トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.8鈴木眞理さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

誰も診ないって言うし、どんなものなんだろうと診始めた

いづ : 今日は摂食障害協会のことももちろんなのですが、鈴木先生がどんな思いで摂食障害に関わっていらっしゃるのか、という部分もぜひお聞きしてみたいと思っています。

鈴木 : 私は内科医です。心療内科の専門医は研修会を逃してしまって取れなかったんです。

いづ : 取りたいお気持ちはおありだったんですか?

鈴木 : いや、ないんです(笑)。取っておいたほうがいいかな?とは思ったけど、私は内科医で十分です。

いづ : じゃあ元々のご希望通りに…

鈴木 : はい、私はやっぱり身体を丁寧に診たいのです。学生時代、茶道部と弓道部に入っていて茶道部の顧問が佐賀医科大学で病理の教授で赴任されました。卒業して2年間病理学教室というところにいたんですが、手伝ってほしいということで助手になって、病理解剖して病気の原因を探ったり、副腎の研究をしていました。たまたま聖路加病院の日野原先生が佐賀医大にいらっしゃって、出身地が山口県で同じで、病理をやるなら内科をやりなさいって言われたんですね。じゃあ内科研修医をやろうって思った時に、その頃のシステムでは卒業して2年以内でないと国から研修医の経済的援助が無く、自前で経済援助のある研修制度を持っていたのが東京女子医大でした。私は内分泌病理をやっていたので内分泌内科に入局して研修医をスタートして、脳のストレスホルモン研究にも取り組みました。たとえばネズミを9つの部屋にそれぞれ入れて、奇数番号の部屋には電気ショックを与えます。シースルーの壁なので偶数マスのネズミには隣の兄弟ネズミが飛び上がって苦しんでいるのが見える。両方ともストレスでご飯を食べなくなるんですが、奇数ネズミは電気ショックには慣れてしまってぎゃって飛び上がるけれど儀式的な感じになり、ご飯は食べるようになるんです。ところが見ているほうの偶数ネズミはずっと食べられないままなんですよ、心理的ストレスのほうが重症です。

いづ・みか : へえ!面白い…

鈴木 : ね、面白いでしょ。いろんな物質を脳に入れてご飯を食べるか食べないか、行動が過活動になるかならないかとかを見ていく。その頃は脳のいろんなことがわかり始めた時期で、アメリカから新しいホルモンを取り寄せたりして、新しい研究をする機会に恵まれて、卒業後6年で学位が取れました。その後、米国のソーク研究所に留学して、ノーベル賞を取った先生のもとで脳ホルモンの研究をして帰って来たんです。東京女子医大は都会の大学病院ですから摂食障害の患者さんはいっぱいいらっしゃるんですよ。精神科は敷居が高いようで内科に来るんですね。いろいろ検査をして診断がつくと精神科に紹介していました。ところが、追跡調査をすると受診が途絶えているんですね。これじゃ意味ないよねと思いながら渡米して、帰国しても同じ状況だった。女子医大ですから、女性患者さんを診療する使命を感じて、じゃあ診てみようかって思って。だって誰も診ないって言うし、本人は精神科に行かないし、心療内科も少ないし、周囲の医者は治療が難しいっていうし、どれくらい難治なのかと、むしろ興味津々で診始めたのがスタートです。

いづ : それは何年ごろのことですか?

鈴木 : 1988年です。

いづ : 30年ぐらい前ですね。

みか : ちょうど私が大学に入った年だ。

鈴木 : ああ、そうなんですか。まだ患者さんもそんなに多くなくて、1980年代が日本にも摂食障害いるよねって言い出した頃です。実は江戸時代から患者さんはいたんだけれど。

みか : 私も中学の時からなので、だから40年ぐらい前。病院も行ったけれどお医者さんがわかんない。

鈴木 : そうそうそういう時代なの。ましてや治療なんて全然わかんないし、誰も教えてくれないし、学校で異常心理学の時にちらっと名前は出たけど精神科の講義でも出てこなかったし、結局医者も知らない病気だったんですよね。当時有名だった東邦大学の筒井末春先生、社会保険埼玉中央病院の鈴木裕也先生の外来を見学させていただくなど、私も知らないから勉強しました。