トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.6生野照子さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

-(けいちゃん)摂食障害のことを隠したいという心がまだ、私にもあって、就職活動の面接の時に「もと摂食障害で…」ということがなかなか言えません。面接を受ける時に、採用する側が「もと摂食障害だったら、この人は採用をやめて、他の人を採用しようか」という風になるんじゃないかと思ってしまって、なかなか勇気を出して言うことができません。

 今はそれで良いのではないかしら。摂食障害のことを言えたら素晴らしいけれど、言えなくってもかまわない。今はまだ、きちんと理解してくれる人って、やっぱり少ないんですよ。言ってわかってもらえるのなら、言うことに意味があるんだけれども、なかなか…ね、わかってもらえない。だから、今はまだ言う必要はないと思う。それよりも協会とか、そういう第三者的な組織が立ち上がって、きちっと社会的に了解してもらえるようになればね、言えるようになる。だから順序として、もっと広い視点からメッセージを発して…週刊誌的なものじゃなくってよ、そういうことじゃなくって、正しく理解してもらうような運動が先ずは必要だと思う。そのかわりに「ちゃんとした仕事はするぞ」ってみたいなことは思ってね。あとは、後輩に光を(笑)与えてあげるように頑張ってくだされば良いなって思うけれどね。

 このことは、私もよく質問を受けるんですが、【無理して言うこと】がイコール【正直】とか、そういうことじゃない。やっぱりそこらへんは、状況をみながら、自分の力を発揮するように持って行ってもらうほうが、有意義かと。もちろん、摂食障害を公表することで自信を持ってやっていける人もいるし。自分しだい。選んだら良いと思うのね。

-(けいちゃん)面接で言わないことによる罪悪感があったり、「これ、言ったほうが良いのかな」って戸惑ったりしています。でも、まだ言う勇気がありません。

 迷いがあるときは、言わなくて良いと思うの。ただ、「摂食障害のことを言ったって、どうってことはないような社会にしていかないと」という思いが、私にはすごくありますね。だって、言えない事情ってあるもの。だからスティグマっていうことなんですよね。これって、【社会とのギャップ】【理解度の低さ】と関連している。だから、レベル上げるべきは社会のほう。そのために、協会が役に立てればいいなあと思うんです。上手くいけば良いなと思うんです。 あと、協会に力をつけて、疑問に答えたり、知識を学んでもらう場所になれば良いなと。そういう拠点みたいな所があれば、ずいぶん病気も認められるというか、やり易くなると思います。そしてもう1つは、専門家の知恵を集める場所でありたいと思っている。英国のアソシエーションなんかは専門書を発行したり、摂食障害の医者とかに助成金出して「摂食障害を研究してください」と、補助することまでやってる。おまけに、国際学会の主催もしている。そこまでいくには、随分時間がかかるけれども、まずはそういうことも参考にして、そして「摂食障害っていうのは我々みんなの問題だよ」という認識を日本にも広げていきたい。…これね、「こころの臨床」いう雑誌で「摂食障害」特集を編集して、そこにも書いたんですけど、「摂食障害っていうのはthemの問題じゃなくってusの問題」だと。つまり、「【あなた達】【摂食障害になっている人】の問題じゃなくて、発症には社会的な問題が大いに影響しているのであって、我々usの問題だ」って、引用して書いたんだけれどもね、そういう風な認識にもっていくべきだと思っているんです。

 それには、やっぱり基盤がないとね。例えば今まで摂食障害ネットワークを開いてきたんですけれども、近畿だけでやっている状態では、そういう声がなかなか出せない。全国メッセージにならない。だから、ネットワークでの5年のノウハウを、全国規模に移すべき時期が来たかなと思っているのです。 それと、もう1つ。そのノウハウの中には、【運営の難しさ】も含まれています。言い換えれば、問題点への対応法。摂食障害ネットワークも決してスムーズにきたわけじゃない。野村さんというリーダーも、ものすごい苦労をしてくださった。例えば寄付金だってなかなか集まらない、日本では。これをなんとかするには、地方の動きでは実現できないんです。だから、各地にいらっしゃる有志の先生方に声をかけて、全国組織として協会を立ち上げることになったのね。本当はネットワークと協会の二つが出来たら良いけど、そこまでは余裕がなくて(笑)。だから、ネットワークを発展させるところから再編成したいのです。

 私たちは今まで…いや、今でも「セルフヘルプが必要」「セルフヘルプって大切」と言っているんだけど、学会などでは必ず反対する医者が居る。「生野先生。患者にそんなことをさせて、どうするんですか」って言われてきたの。セルフヘルプの理解が行き届いていないから、「専門病院を作ってほしい」という要望すら出せない状態が続いている。社会に正しい理解を促すためのメッセージを出す基盤がないから。でも、もう立ち上がらないといけないよね。セルフヘルプかサポート組織かの違いはあるけど、良いとこは繋がったら良いし、繋がれない点は繋がらなくて良いし、お互い住み分けしたら良いしね。セルフヘルプの純粋性を保つには繋がらない方が良いって見方もあるし、役割分担するほうが良いという考え方もある。それはまた、皆で考えていけば良いんじゃないかと思う。とにかく摂食障害を「恥ずかしくない病気」と考える拠点作りをしたいというのが、私の願い。30年間、勝手に自分の任務を作っているんだけど「これだけは、しないと駄目」と思ってるの。

 なんで私がそういうことを強く願うかというのはね、やっぱり「若い女の子が死んでいる」という事実。命をなくしていること、これはね、世間の人はあまり知らない。実態も調べられていない。でも亡くなっている、この病気で。「若いし、これから」という子がね。しかもそれが、素敵な女の子なの、病気を取ればね。そんな子が命を亡くしているという事実を、決して放っておけない。自分が治療していても…そこが一番…辛い思いをしてきたことですね。自殺もあるし…。 だから何としてでも、そういう活動を始める予定です。