トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.6生野照子さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

-(けいちゃん)さて、お話はストレス疾患研究所の話になるんですけれども、浪速生野病院さんの外来医として診療される傍ら、ストレス疾患治療研究所のほうをなさってますが、浪速生野病院さんに来られる患者さんと、ストレス疾患治療研究所に来られる患者さんの違いなどを、未来蝶ネットをご覧になっている皆様にご紹介をしていただきながら教えていただけませんか。

 それはね、病院では心理治療が出来ないという、めちゃくちゃ不合理な仕組みが日本にはあるんです。病院って、医療しかしちゃダメなの。だから、心理治療ができないの。病院っていうのは医療保険の場なんです、…ね。でも、すごくおかしいですよ。私が大学病院で診療していた時も、心理士が1人もいなかったんです。だから、研修する条件でボランティアで来てもらって。あとは、実験助手とか何とかの名前をつけて、少量のお金で来てもらった。大きな大学病院でも心理士の正規雇用がなかったんです。今でもそうですよ。だから、何かの形を作らないといけないですよね。いま、私は心理士さんとグループを組んでいて、ソーシャルワーカーもいるし栄養士もいるんですが、病院では摂食障害の栄養指導も収支がとれない。もちろん、心理治療もとれない。それで、他の病院では階段を別にするとか工夫しておられるのです。1階は医療、裏側の階段を2階へ上がったら心理治療者がいるとかね。まあ、カッコだけです。そんなふうにしてらっしゃるんだけれども、なんだか侘しいじゃないですか。…で、心理士が堂々と働ける研究所を作ったのです。私は大学で心理士を育ててきましたので、心理士の場を作りたいという思いがあったんです。心理治療っていうのは医学治療ときちっと肩を並べるくらいになるべきだと思ってます。病院みたいに【医師の下で医師の指令でないと動けない】ようなことでは絶対にダメだと思ってるんです。「チーム組むからには、みな対等」ということで「それなら別のとこで探そう」とね。探したのが、今のストレス疾患治療研究所。どこに作るか色んな場所を探したんですけどもね。じつはあそこ、元やきとり屋さんだったのよ(笑)。

-(一同)笑。

 「これだ!」って決めたの。やきとりのボックス席、カウンターも真ん中にあってね。…で、座敷席が三つくらいあるわけ、奥は厨房。…ね。「これ!ぴったり!」と言って。それから、やきとり屋さんて木作りでしょ。心理相談室は家庭的な雰囲気を出したかったから、木をそのまま使ってね。もちろん全部洗って改造もしたんですけどもね。木作りを一からしようと思うとえらくお金がかかるけど、元のを全部生かしてね。ボックス席は、家族ごとに待合してもらうのに丁度よい。掘りごたつもみんな良い。(笑)

-(一同 笑う)へー!

 すごく良い感じだけれど、ただ、仕事が終わったら一杯飲みたくなるの(笑)。あそこには、お酒の神さんが住んではるんやね(笑)。あははは。

 それで…心理士が堂々と専門的役割を務める場所ができた。つぎに良かったのは、患者さんの「居場所作り」ができたこと。うちの当事者グループは、院内グループもあるし家族グループもあるしオリエンテーショングループとか【あゆみの会】も浪速生野病院でやっているし、色々やってるんですけれども、【居場所作り】っていうのをやりたいと思って。「居場所がない」と感じている人はけっこう多いんですよ。だから研究所で【ほこほこクラブ】っていうのを、作ったんです。

-(けいちゃん)【ほこほこクラブ】?これは?

 研究所で集まってね、お茶を飲んだりお話したり、制作したりする【ほこほこクラブ】。私たちの間では「ほこちゃん」とか呼んでるんです(笑)、ほんと、「作って良かったな」と今一番感じているんです。まだ出発したばかりだけど、みんなすっごく馴染んで…うん。本当にね、病院でやるより、やっぱり病院でない所でね。病院はやっぱり病院じゃないですか。「研究所を作って良かったなあ」と思って。これもまた、居酒屋の雰囲気ピッタリだと(笑)。アルコール抜きですけどね。

-(けいちゃん)来られる方は、摂食障害以外の方も来られるのですか?

 まだ数名のグループで、摂食障害が中心ですが、ウツの人もいらっしゃる。基本的には、どの病気でも参加できます。

-(saahko)それは、ここに来られてる患者さん限定だったりとか?

 ええ、限定。体調なども配慮しなければならないので。

 で、今日ね、ほこほこのリーダーさんがメンバーの肩にもたれたんだって。ね。そしたらそのメンバーがね、「あ~、温いな~」って言ってくれたんだって。そのリーダーが今日、私にね「先生、その言葉だけで充分や」って。「私らね、その『温いな~』って言える場所だけ探してるねん」って。…うん。私、もう胸がキュンってきてね。「あー。やっぱり居酒屋効果やなあ」って(笑)。「やきとり屋、良かった」って感じ(笑)。

-(けいちゃん)ああ、でも「温かいな」って肌と肌を触れ合うその感覚って、やっぱり大切ですよね。言葉なんかいらないですよね。

 そう。難しい治療法よりも、本当にそれだと思う、私は。ほこほこした気持ちは原点やと思う。だから色んな治療法があって、大がかりな治療しても、結局は「ほこほこ」でないとダメね。究極はそこですよ…うん。それはものすごく感じてきました。摂食障害のみなさんから感じてきました。

-(saahko)あの、心がホッと出来る場所。自分が自分であれる場所みたいなかんじですかね。

 そうですね。心がホッとできる感じ。医学的・専門的な治療も色んなことをするんだけれども、その結果として、そんなに難しい哲学が出てくるわけがない(笑)。もちろん、摂食障害を経験した人は人間としてとても大きくなられますよ、みんな。大きく育っていくんですよ。だけど、そこからパッと花咲くのは、やっぱり【ほこほこ】ですね。【ほこほこ】は人の基本・原点にある、シンプルで、しかも力強い気持ちだといえます。