トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.6生野照子さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

-(けいちゃん)手探りで模索しながらもすごく、的を得たやり方をされているのが、すごいなあって思います。
-(ssahko)足と身体と全てを使って出向いていかれた上で、方向性などを見出してこられたのが素晴らしいなって思います。

 いや、まあねえ。素晴らしいかどうかは別にしてね。今までは大学にいましたから、外国の文献とかをね、実際に確かめながらやったっていうかな。もちろん、学会にもずっと出てましたし、いろんな意見を聞いてました。だから、自分の私的感情だけでやってきたのでは、ない。まあ、大学にいるということが、そういう冷静な研究とかを取り込める立場にあったしね。もし、そういう文献だけで治療をやったら、とても冷たい治療になって続けていられなかったと思うんだけれども、感情だけでやっても…ね。なんというか、唯我独尊(ゆいがどくそん)…っていうか、単なる我流になってたと思うの。ただ「英国ではこうしてる」とか、「アメリカではこうしてる」とかいうことを学べる雰囲気の中に居れたから、今思えば、路線訂正が出来たかなと思いますね。

-(saahko)偏ることなく、多角的なというか立体的な医療を作ってこられたということでしょうか?

 そうです、今でもそのスタンスは忘れまいと思っているんです。やっぱり医者っていう責任性…、時には命を預かるじゃないですか。薬を扱ったりね。それが我流になって、いくら【思い】とか【熱意】をかけても、熱意だけで間違った治療したら…それこそ、とんでもない。やっぱりそこはしっかりと専門性を…言い換えたら、イコール勉強ですよね。勉強をしてないとダメという思いは、専門家として、ずっとありますね、ええ。熱意だけでできる仕事じゃないと思っているんです。

-(けいちゃん)そのとおりですよね。「熱意だけでは救える命も救えない」という部分が凄く今、心に染みました。

 そうなんです。私ね、医学部を卒業して医局に入ってからですけれども、まだ若い時に、ある保健所へ勤めたんです。その時はまさに、あそこは【ドヤ街】。今でこそ観光地みたいになっているけどね、もうひどい状況だったんです。道を歩いていたら人が倒れている。生きてるのか死んでるのかわからない。そういう状況だったのね。そこで、子供達の悲惨な姿を見てきたんです。例えば、診察に来ない人の往診に行くわけ。診察に来る人より、来ない人の方が大変なの。…で、子供の検診に来ない人がいて、保健婦さんが「先生。ちょっと診に行ってあげて」っておっしゃる。1人では行けないから複数で行く。そしたら、すごく臭くて暗いガード下みたいな家に幼児が2人いるんだけど、光に当たらないから【クル病】で歩けずに、2人とも這ってるの。家の中はゴミだらけ!「お母さん、何食べさせてる?」って聞いたら、その辺で牛乳を買ってきて飲ませてるだけって言うの。日も当たらない。親は、ボケーっとしてる。もう、気力も何もないわけ。それが一例。悲惨なの。…で、私ね、もうじっとしてられないから、病院の試供品とか集めて、そういう人が検診に来られたら渡したりしてね。その他にもびっくりしたのが、子供の背中に魚のような鱗が出来ていたケース。母親が一度も擦ってやらないから、垢が鱗になっている。びっしりと、背中に鱗。…で、「こういう薬を、こういうふうに使ってあげてくださいよ」って言うんだけど、薬を買うお金がない。だから、そういう薬を集めて持って行って「じゃあ、これ使ってください」と言って、さしあげたりしてたの。そしたら、薬をもらう目的だけで来る人が多くなって、子供を連れてこない。それからまた、子供の服を私の友人から譲ってもらったりして、きれいにしてね「使うなら使ってください」と差し上げたの。ほんとにいっぱい持って行った。でも、保健婦さんがおっしゃるのね。「先生、申し訳ないけど、持って行った子供の服は、隅へポーンと放ったままですわ」って。うん…。結局ね…救えないのよ。自分の力ではね。【どうしたら救えるか】っていうのは、やっぱりものすごい大きな課題だけれど、救えない。「服を持っていった」「薬をあげた」…って、結局、私がホッとするだけ。厳しい言い方をしたら、自分の気持ちを救っているだけ。そんなことで本当の意味で救えるはずがない。やっぱり全然違う視野から考えないとね。【人に対する医療っていうのは、そういうこと】っていうのを、またそこで学んだのです。それが、私の一生の宿題(笑)となって。大学を定年退職した今、保健所近くの病院に帰ってきたんです。だからこれから。これからこの宿題を果たせるか…?…ね!

-(けいちゃん)今からですか?!もう充分やってきはったと思います!

 …うん。でも、自分だけで果たせるとは思っていない。で、どうするのか考えたの。そこで出た答えが【後輩を育てること】。だから、私の考え方・スキルを全部後輩に譲りたいと。今、20人の研修生がいるから、やりながら教えて・やりながら教えて…ね、考え方っていうかな、医療っていう事柄に対する考えを…全部教える。それが「やっと宿題を果たせることかなあ」…って思っているところです。ここには、ものすごい厳しい状況の人も来られる。医療と生活とがひとくくりになっていて。

-(ルマ)やっぱりもう、無気力というか、なんか…辛すぎて見えなくて届かない感じがするんですけど。

 そうそう、そういう人もいるし、「薬出すけど、売らないで、ちゃんと飲んでくださいよ」(笑)みたいな人もいるし。「先生。薬一日分いくらですか」って来る人とかね。そりゃ大変だけど、研修生に「そういう時、どうする?」って考えてもらうことが、私の宿題を果たす1つかなって考えてるんですよ。

 それと摂食障害の患者さんが多いから、【「摂食障害はアレキシサイミア」などと考えない医者・心理士】が育ってほしいと思う。それぐらいかな、出来ることは…と思って。まあ、出来ることから始めないと、しょうがないよね。