トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.6生野照子さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

-(けいちゃん)生野先生が摂食障害に関わり始めた当時、今ほど世に知られてなくて、症例とか回復の事例がなかった・少なかったと聞いています。その中で先生は、回復への方向性や治療方針を、どのようにして見出していったのでしょうか。「ここの方向に歩いたら良いんだよ」っていう道を、どのようにして見つけていったのでしょうか。

 あのね、当時【心療内科】自体が少なかったんですね。だから小児科でも「心療内科みたいなことをやってんの?」って感じでね。すごくマイナーだったんです。まあ、今でもそんなメジャーじゃないですが。でも、その頃は変わり者扱いされるような、「なんで医者が心理やるの?」みたいな感じの時代だったんですね。だから、教えてくれる人もいないし。北は北海道から南は九州まで、「こういうことをやってる」という病院とか医者を探して、武者修行しました。

-(けいちゃん)え~!!(驚)

 はい。渡り歩いたんです。もちろん精神科も見に行きました。摂食障害だけじゃなくって「人の心を診る医者として【診る】ということは、どういうことかな」って思って。…で、その時、いろいろな先生が色々なやり方でやってらっしゃったんです。それが、とても私には役に立ったのね。多様な方法があるなっていうのがわかったんですよ。ところが…、各々の先生はそのやり方だけでやってらっしゃる、その方法だけで。でも患者さんは、たまたまその病院へ行って、そのやり方を受けるんだけれども、ひょっとしたら違うやり方のほうが良いかもしれない。あるいは、二つ三つのやり方でやってあげた方が良いかもしれない。色んな治療法があれば、選べるじゃないですか。でも、その頃は、たとえば「自分は精神分析しかしない」みたいな感じでしたのでね。でもそれは、ちょっとおかしい、違うかなと。患者によってではなく、医者によってやり方が決まるなんて…ね。そんな疑問が、出てきたのね。これは摂食障害以外の患者さんも含めて、そう思ったんです。

 それともう1つは、私が小児科で心療外来するようになって、その頃は子供の摂食障害って滅多にない時代だったけど、「あれ?ガリガリの子が来るわ」と思っているうちに、ダダッと増えてきた。ちょうど不登校が云々されていた時代ですが。「あれ?どういうこと?」「小児科に摂食障害の患者さん?」みたいになってきたんです、段々とね。

 で、小児科ということもあって親御さんがついて来られるでしょ。私は診察する時は、患者さんを待合まで呼びに行くようにしている。待合でどういう感じで待ってらっしゃるかというのを見るために。診察室の中で喧嘩していても、待合ではもたれあって座っておられたり、その逆だったりするわけ。子供と親が遠く離れて座っておられる場合もある。そういうことも治療で配慮しないといけないので、外まで呼びに行くのね。ところが、待ち合いでは、お父さんやお母さん達が寄って話しをしておられる。「おたくも、摂食障害ですか」みたいなことですよね。それで、診察になるとその親御さんが「先生。あの人と話しをして、こういうことを教えてもらった」とか、おっしゃるわけ。私は「あ、これは凄い!」と思ってね。医者には遠慮して細かいことを聞けないけれど、家族同士でしゃべって、結構「良い事聞いた」って力つけておられる。そこで、「家族の力っていうのは、家族同士が話し合うことで生きてくる」と思って、立ち上げたんですよ、家族の会を。それがあゆみの会…もう、30年以上前の話ですけどね。その頃は案内も何もかも手作りで、やり始めました。それが「日本の病院で初めて」と言われて、新聞にも載ったんです。「こういうことをやり始める医者がおる」みたいな。あの…なんていうか、宣伝がてらにも、載せてもらって良かったわけなんですけれどもね。それで、新聞だけでなく口コミなどで広がったようで、最初の会に100人ぐらい集まってらっしゃったんです。

-(一同)えー、すごい!その時点で凄いですね。

 私も驚いたわけですよ。これだけみなさん、困ってらっしゃるというか…、お互いに情報が欲しいっていうか、心の支えが欲しいっていうか。とにかく、孤立しておられたのが、その新聞記事とかを見て集まってらっしゃった。私は「これは、きちっとやらないといけない」と思って、やり始めたんですね。そうするとね、もう、すごいパワー。当事者力が。すごいパワー。

   …で、私は「こういうものこそ解決の方向だ」と感じて、なんていうかな、嬉しかったですね。ですから、今もその方向はずっと続けている。つまり、摂食障害には様々な問題が絡んでいますからね、統合的治療が必要で、医者1人で治せるような問題じゃない。内科や小児科医は、身体を診る専門家じゃないですか。「身体だけを診て、やれるか」っていうと、そんなことね…出来ない。精神療法も、「〇〇治療法」の1つでやるのじゃなくって、「あなたにはカウンセリングだけど、あなたには行動療法」って言える複数の治療法を知識・技術として持たないといけない。自分で持てなければ、スタッフで持つとかね。そういう統合的・多角的・立体的な治療をしないといけない。そうすると必然的にチームも必要になってきますよね。その中に、当事者の参加が不可欠だと思ったんです。

 …で、その【あゆみの会】には、本人さんも来て下さった。そのハーモニーが良かったので、【本人さんの力】【ご家族の力】っていう両方とも必要だと思うようになりました。とにかく、当事者力ってのを中心に置いて、それぞれの立ち直りに使っていく。それをマネージメントするのは、その当時は専門家しかいなかったので、「マネージメントするのは専門家なんだけれども」っていうふうなことでやってきたのです。今では世話人さんが運営してくださっています。

 ところで、私は英国の国際摂食障害学会に第二回から参加しているんですが、そこでグループのやり方を学ぶことができました。日本では学ぶ場所がなくて、文献を読むしかないので。そして1999年に一年間留学して、英国で治療をやらせてもらって、その時にそれ以上の細かいやり方を学んで。「やっぱり自分の考えは、間違ってなかった」って感じて。でもまだまだ…全然及ばないのですが。

-(ルマ)色んな所を実地で学ばれてきたんですね。

 そうですね、まあ、それも最初の患者さんの(笑)…背中が目から離れないからでしょうね。

-(saahko)その原動力も全て、最初のこの方のことがあったからでしょうか?

 いつも意識しているわけではないけれど、たぶん、胸の奥にあるんだと思います。「あの人を治せなかった」という思いが。だから、あのとき十分にやり方を知っていたら救えたような気がするんです。救えるっていうか、【安らぎの感じ】ぐらいはね、新米の医者であっても出来たと思う。でも、ほんと何にも出来ず、むしろ横でジャンジャカ ジャンジャカ言う【うっとおしい人】でしたからね。それはやっぱり、ズシンと心にありましたね。