トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.5渡邊直樹さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

人との関わりの苦しさや心の寂しさを受けとめてあげることが大事だと思います

-先生が一番大切になさっておられることは、人と人が気持ちを伝えあうコミュニケーションなのですね。

 そうですね。当事者の方の一番の問題はきっと、人との関わりの中で自分をきちんと受け止められなかったり、それに不安を感じたり、自分自身もうまく自己表現できなかったり、欲しい時に欲しいとなかなか言えないで我慢してしまうとかね、そういうようなプロセスがあると思うんですね。エインズワースという研究者が3〜5歳くらいの子供を観察した報告があります。最初はお母さんも一緒に遊んでいるのだけど、おもちゃで遊んでいるうちにお母さんがいなくなっちゃうのね。そんな中に知らない人が入ってきた時に子供がどんな行動をとるかで3つのパターンに分けてる。お母さんが来た時に大泣きしてお母さんに抱きついてだっこしてもらってよかったと思って、そしてまたそのうちに遊び始めるという安定した反応をする場合は、お母さんの気持ちがちゃんと通じている。ところがお母さんの気持ちがちゃんと通じていないと、お母さんが戻ってきても知らん顔してしまうタイプと、ずっとしがみついてしまうタイプがいる。そういう風に3つに分けているんです。これはアタッチメントとか愛着とかいう、ボールビーいう人が唱えた人間の情動の表現の仕方なんですけど。そういうような小さい頃の関わりがすごく影響しているんじゃないかなと思っているんです。

-ということは、相手の気持ちや愛情を受け取るアンテナみたいなものが成長したり安定したりすると良くなって行く、というか楽になっていくんでしょうか。

 そうですね、楽になりますよね。ああ、大丈夫だったと、自分自身の心の中に安心できるものが育っていく。お母さんはちゃんと自分のことを見てくれているんだなと。お母さんがいなくても安心出来るものが心の中にあればね、一人でも行動できたり色んな人に関わったりできるようになるのだけど、そういう体験が無いとやっぱり不安感が残っちゃうし。と思っちゃうんですけど、どう思います?

-私の、自分自身の体験から考えると、まさにそうだと思います。摂食障害は自分の中に杖みたいなものが無かったのを自分で作る過程だったというか、実はあるんだということを発見するための過程だったというか。自分の中に杖がないから人に言われたことを気にしたり、人が去って行くんじゃないかと怖かったりするけど。その杖を見つけたら「私は私」って地に足が着いた。人と関わるのも、怖くなくなったというのがありました。だから、今お聴きしていてしっくりきます。渡辺先生ご自身はいかがですか?思春期に 悩んでおられたとおっしゃってましたが。

 いやー、ありましたよ。やっぱり思春期というか小学校5年くらいかな、親が、自分を擁護してくれると思っていたのに逆に叱られてしまった経験とかね。僕の場合は父親は一方的に叱って、母親はちょっと過干渉な母親でしたね。自分が信頼していると思っていた学校の担任の先生にちょっと裏切られた体験なんかもあって、親だけじゃなくて色んな人の影響があるかなと思いますね。

-その中で先生なりにご自身の中の杖を見つけようと、社会学や医学を学ばれたんですね。

 そうですね。

-そういう人間関係の色んな傷って、やっぱり人間関係で修復できる、傷を手当できるんじゃないかなと私も感じています。

 摂食障害を治療するにあたっても、食べる食べないとか食べ吐きを兎に角止めようとかいう発想ではなくって、その背景にある人との関わりとか心の寂しさとか そういうところを受け止めてあげるのが大事かと思いますね。