トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.5渡邊直樹さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

変わっていくプロセスを支えてくれるのが家族会だと感じています

-渡邊先生は家族会のファシリテーターをなさっておられますね。摂食障害に関わっておられる医師の方で、そういう入り方をしておられる方は少ないのかなという印象なんです。

 そうですか。僕自身も今のスタイルで居られるのは偶然という風に感じています。事務局をやってくださっているお母さん方がいるからこそ今の自分がいるという感じですね。お母さん方が非常に熱心でね、きちんとしていて。会の時には場所もちゃんと予約をしてくれて、セッティングをして、ホームページに載せて、そして、参加者を募ってくださいます。今は、月に1回会を開いています。

-先生ご自身についてお聞きしてもよろしいでしょうか。もともと先生は社会学を勉強なさっておられたんですね。

 そうですね。社会学といっても知識社会学という分野で、人間の考え方が社会にどういう風に影響を与えるかという、イデオロギーについての学問なんです。例えば今までにカール・マルクスとか、そういう人たちがお金じゃなくて、ちゃんと気持ちを伝えあうことができるような理想の社会というか人と人との関わり方を提唱して、お金がどういう風に人間の見方を変えてしまうかという理論を唱えたんですね。そしてそれがソ連とかを中心にした社会主義という国につながったんですけれど、結局なかなか国の体制としてはうまく行かなくなって…。そういう歴史があるんです。結局イデオロギーに人間は影響を受けるんだな、ということですね。自分自身も含めて色んな人からの影響を受けて今のその人や今の自分がいるし、いろいろな考え方を取り入れてこその今の自分がいる訳ですね。そういうことについて勉強をしました。

-先生の中のどういう部分がそういうことを学んでみたいって思われたんですか?

 それはやっぱり思春期の頃からの課題というか、「自分ってなんなのだろう?」とか「何のために生きてるんだろう?」とかそういうようなことを考えて、そして自分自身を見つめる時に役に立つのかなと思って勉強を始めたんですけど…。結果としてはあまり役には立たなかった(笑)。 いまだにやっぱり自分自身というのはよく分からない。ただひとつ分かるのは、色んな人の反応とか 色んな人が自分について話してくれることとかを通して自分というものが見えてきてるのかなと思いますね。

-ドイツの大学でイデオロギーについての勉強をなさって、その後医学部に入られたんですね。

 そうです。医学部は、社会学じゃダメだなというような気持ちから、やっぱりもっと自分自身の身体も含めた心と身体を知りたいという気持ちがありまして。

-さらに学びを深めたい、広げたいということですね。

 そう思って勉強したんですけど…。やっぱりよく分からないですね、未だに。多分、一生の問題かなと思う。一生問い続ける、自分自身に。

-自分探しの旅ですね。 摂食障害も、自分探しの旅みたいなところがあったな。もちろん今もそれは続いているんですが、あの頃は、すごく濃縮した自分探し、自分を見つけるためのすごく濃縮した期間だったような気がするんです。先生は、当事者の方を診てこられてどんな印象をお持ちですか?

 そうですね、僕もそう思いますね。最初はすごく混乱した時期があると思うんです。でも、それが段々変わっていくプロセスがあると思うんです。そのプロセスを支えてくれるのが、やはり家族会のような人とのつながりかなと感じています。この家族会は、私たちは「当事者・親・兄弟姉妹の会」と言っていて、当事者も親も参加して、専門家の私も一応参加して、それ以外に摂食障害に関心のある人も参加できる、結構ゆるい会なんです。そういう中に参加して、段々自分自身が分かってくるし。親も色んな人の意見を聞 いて、じゃあ今度はこんなふうに娘に関わってみようかな、と親も変わってくる。当事者本人も変われるし、親も変わる。親が変われれば、本人も変わる。とか 色んな相互作用があって、それがとても大事なのかな。摂食障害の治療、というか摂食障害の悩みを受け止めたり悩みの解決の仕方として、そういうプロセスは必要なのかなと思いますね。