トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.4奥田宏さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

本人が納得できる生き方を見出すためのサポートがしたい

-奥田先生のクリニックのキーワードが、「病気についての知識を得て認識を改め、必要な支援、仲間を得ること」ということなのですが、この考え方に先生が行き着かれるまでの今までの過程のことなんかを今日はお聞きできればと思っています。
 早速ですが、先生は医師になられた初期のころからアルコール依存に興味を持たれたということで、その辺のところからお聞かせいただけますか。

奥田宏先生  医者になって金沢大学精神科の教室に入局したときに、烏帽子田先生というアルコール依存症に非常に関心のある先生がいらっしゃっいました。烏帽子田先生が県内で勉強会を主催しておられたのに誘われて行ったりして、頑張っている人たちがいらっしゃることを知りました。烏帽子田先生はアルコール依存症というのは病気であり、適切な治療、援助が必要であるとおっしゃっていました。患者さんの担当になったことはなかったのですが、夏休みでほかの先生がお休みのときに臨時で担当して少し関わったことがあったのと、断酒会にオブザーバーとして参加して、どういうことをやっているのか見に行ったりしました。
 ほかのお医者さんたちは、依存症は病気であるとは見ていなくて、嫌う人が多い印象でした。理解なさっていない方が多くて、適切な援助がされていない病気なのかなと思っていました。だけど、断酒会などに行くと回復されている方もいて、支援の仕方によっては回復するんだなと感じていました。

-もともと医師になろうと思われたときには、精神科医と決めていらしたんですか。

 手先が器用じゃないから外科はだめだろうというのと、内科になるお医者さんが多くて、優秀な人との競争に勝てないのではないかということもありました。ドフトエフスキーの『罪と罰』には、人間というのは悪魔的な心もあれば天使的な心もあって、複雑に心が入れ代わる存在だということが表現されていますが、人間のそのようなあり方を理解してうまくサポートしてあげられたら面白いんじゃないかなと思ったのが、精神科医になろうと思ったきっかけです。だから、医学部にいたときも、ほかの科に行こうとは余り考えなかった。

-本がお好きなんですか。

 本も好きですが映画が大好きです。一番好きなのは「アラビアのロレンス」。このごろでは「路上のソリスト」が非常に良かったですね。アメリカ映画なんですが、精神障害の音楽家をサポートする新聞記者の物語です。新聞記者は、自分がいいんじゃないかと思う方向に誘導しようとするのだけれど、音楽家は自分なりの生き方がしたい、人にレールを敷かれるのはいやだということで、結局、援助は失敗したような形で終わります。音楽家は敷かれたレールには乗らなかったけれども、家族との再会を果たして、精神障害を持ちながらも自分なりに生きていく。

-その新聞記者さんは最後どうなったんですか。

 新聞記者は、よき理解者として、友人として交流を持ち続けました。

-今のお話が、摂食障害やアルコール依存の援助者と本人の関係性みたいな部分において、何となく重要なところの象徴な気がしますね。

 そうですね。その辺の描き方がよかったというか、最後は非常にいい終わり方、すがすがしい終わり方でした。やっぱり強制的な治療というのはよくないわけです。本人が納得するような生き方を見出すために、治療もサポートになればということですよね。

-決まった治療プログラムがすでにあって、それに沿って医師の言うことを聞いて治すという治療法もあるんだと思うんですが、奥田先生はきっとそうじゃないんですよね。

 こうしたほうがいい、こういうふうに治療を進めようという標準的、プラン的なものは自分の中にありますけど、それは患者さんとの合意のもとで進められるんだったら進めるし、合意できる範囲で話がまとまったところで援助していく、そういうことを心がけています。

-奥田先生のところに摂食障害で受診すると、具体的にどんな診察になりますか。

 どんな生きづらさがあるのかということで、生きづらさの改善を話し合うことがもっぱらです。最初は認知行動療法的にやればいいのかと食行動日記などを書いてきてもらいました。どんなときに過食症状が出てくるのかとか書いてもらったけど、あまりうまくいかなかったから、あれはやめました。もっぱら生きづらさを整理することと、あとは回復している人たちの話を聞きにいってみたらとお勧めしたりしているんです。加えて、東京の自助グループNABAの会報を読んでもらったり、摂食障害に関する本を読んでみて、それで自分の問題を考えられるといいねという関わり方をしているんですが、うまくいく人と、うまくいかなくて来なくなる人もいます。

-日記を書いてきてもらうのがうまくいかなかったというのは、書いてこなかったということでしょうか。

 いや、書いてきてはくれるが、自分のやり方がまずかったのか、焦点がご本人の悩んでいるところになかなか行き着かなかった。悩みながらも、日記をいい方向にもっていこうとするので、うまくかみ合わなかったのかなと思います。自分らしい生き方ができるというか、その方向に動いていく人はそのままよくなっていく。生きづらさの問題を一緒に考えながら、ご本人が望むような方向で動き出せたら、自然に「定食も食べられるようになったわ」って、よくなっていく。じゃ、これでいこうと。人と関わるのがうまくいかない、気分に波があったり不安症状がある人には薬を使って、気分を安定化したり不安を抑えたりはします。でも全然使っていない人もいますし、気分の変動はあるけど使わなくても大丈夫という人もいます。どか食いをしたり、ほかのことにもこだわりがあって、まだ話がしたいという人には話をしに来てもらっています。