トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.3竹村道夫さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

摂食障害の治療は、実は医療者にも大変な労力が必要なんです

―薬はあくまでも補助的な意味合いで処方なさるのですね。
ところで、この病院のように摂食障害を専門的に総合的に診てくださる施設が日本には圧倒的に少ないということをわたしは常々不思議に感じているのですが、それはどうしてなのでしょうか。

 摂食障害は、治療にとても労力が必要で、治療中にトラブルが起こりやすいと思っている医療者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 私たちも、ここまで来るまでにはやはりいろいろな苦労もありました。自傷行為や薬の溜め飲みなどの問題が頻繁に起こると、看護士や医者などスタッフの間でできればなるべく関わらず、敬遠しようとする方々もいらっしゃいました。でもだんだんと経験を積みながら、いまの形ができあがったんですね。トラブルはそれでも少しは起こります。やはり積み重ねですね。大きな失敗をなるべくしないように注意を払って、いろいろな経験からスタッフみんなが学びや気づきを得ながら、日々改善を重ね取り組みを行っています。

 大きな助けになったのは自助グループや回復者の方が力になってくださったことです。私が当院での治療を始める前、神奈川県の帝京大学溝口病院で働いていた頃、アルコール依存症で自助グループに参加なさっておられる回復者の方がお二人、ご自分の時間とお金を割いてその病院におけるアルコール症治療プログラムの立ち上げを親身に手伝ってくださいました。それは、とても大きな助けになりましたね。だから、私は自助グループの力を信じています。この病院でも、NABAやOAのメンバー、最近では、窃盗行為の自助グループのメンバーが、私たちの治療プラグラムを援助してくれています。

 自助グループは、治療プログラムを開放的にするうえでも重要です。閉鎖的な環境で個人療法を中心とした治療をしていると、危ないところでは危なくなるんですね。強制的な方法で患者さんを閉じ込めたり、薬漬けにする病院だって少なくはありません。医者や治療者と患者さんとの性的な問題が起こってくる場合もあります。

 ですから、システムをオープンにすることが大切だと思っています。外部に開放する。閉鎖的な雰囲気をつくらない。治療に熱心なのは良いが、匙加減も必要ですね。あまり熱心に関わり過ぎると、患者さん方の人生を預かるような図式になってしまって、それはそれで新たな問題が起こって来ますから。

 話は変わりますが、最近明るみに出てきているのは、摂食障害の方のクレプトマニア(万引き)という症状です。ブリミアでは三人に一人、回数は少ないけれど経験があるという方も含めると半数の方が万引きの経験をお持ちです。摂食障害学会という学会があるのですが、前回(2008年)の学術集会で、日本における精神科関連の学術集会では初めて摂食障害と万引き行為についてのディベートが行われました。この病院でもクレプトマニアの自助グループをつくることを繰り返して、できてはつぶれ、できてはつぶれながら、最近やっと定着してきました。メッセンジャーという回復した方々が東京からいらっしゃってグループを導いてくれます。

 万引きという行為も依存する対象なんですね。私自身は、最初は摂食障害の方の万引きをなんとかしないといけないと思ってこの問題に取り組みを始めましたが、そうすると摂食障害ではない常習的な窃盗行為を持つ方も集まってきて、試行錯誤をしながらその治療をしています。窃盗行為の自助グループが育ってきて、何とか治療ができるようになってきました。

 そういう問題は根っこが同じようなものです。世代を超えて次から次へと連鎖するんですね。何世代にも渡って、アルコール、DV、摂食障害、薬物と連鎖していく場合があったり、同じ家庭の中にいろいろな嗜癖問題があったり、一人の人が依存対象を変えていろいろと症状遍歴をしておられたり。