トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.1大河原昌夫さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

家族が原因ではないけれど、本人が背負ってきた辛さの面では家族の問題は大きいと思います

―家族が原因ではないとはっきりおっしゃっているところが、親御さんにとっても救いというか希望になると思うんですけど、少し詳しくお話ししていただけませんか。

大河原昌夫先生ここが難しいところですね。原因じゃないかもしれないけど、ひどい家族はいます。家族に苦しんできた本人も多いですね、残念ながら。全部じゃないんだけど。さっき申し上げたように、家族とか学校のいじめとか辛い歴史を背負ってきているんじゃないかな。もちろん、それが原因という意味じゃなくて、病気の原因というのは複雑ですから、わからないんだけど、遺伝的な要因もあるかもしれないけど、本人が背負ってきた辛さの面では家族の問題は大きいと思います。あと、本にも書いたかもしれませんが、本人が家族を非難しても、そのうち意見が変わるかもしれないから、それは聞いてあげていればいいわけです。そのために僕らは家族会をやっているわけで、家族はそこですぐ本人に対して反論する必要はないのです。僕が家族会をやっているのは、家族を治そうということじゃなくて、家族の井戸端会議の場を設けているだけ。僕の家族会は7時過ぎから9時過ぎまでやるんですけど、終わっても家族は駐車場にいて帰らないんですよ。みんなで20分も雑談している、家族同士で。だから、家族同士の話し合いができているので、単純にうれしいことですね。本当にそれでよかったなと思っています。そう、家族原因論は難しいんです。ただ、精神療法をやる医者に限って、家族を非難しても始まらないと言うんです。そういうことをしても本人が助からないから、そういう非難はやめさせようと言うんだけど、僕はそれに反対で、家族を思いっきり非難したらいいと思うんですよ。そうしないと本人が言いたいことが言えない。だから、そこは一回くぐるべきところだと僕は思っています。

―さっき、しかるときが必要だとおっしゃっていた。

ええ。ある自助グループの主催者の方も、あの家ひどかったけど、自分の家族をまあまあいい家族だったなんて言ったら、仲間からすごい批判されたと言っていた。「あんた、きれいごと言うんじゃないよ」って言われたって。僕も全くそう思う。だから、ひどかった家族に対してはひどかったと本人が言えたほうがいいんですよ、一回は。僕はそう思う。それが言えないで、家族を批判してはいけない、批判してもしようがないと最初から言う医者は、僕はまずいと思います。

―なるほど。家族が原因でないけれど、本人が家族に対して言いたいことを言える関係づくりは必要だと。

そうですね。そこが言えた上で、特定の家族から病気が発症することはないよという意味であって、本人がいっとき思いっきり家族を批判してはいけないという意味では絶対ない。それは本人の権利だと思うし、ひどいお父さんだったらひどかったと言うべきだし、物分かりのない母親なら、あんな母親嫌だったって言えたほうがいいと思います。

―私、実はすごく疑問だったんです。私も含めて摂食障害の仲間たちの多くは明らかにしんどい家族の中をやってきているのに、家族関係についてはっきり言う人が少ないのは何故だろうと。たぶんそんなところからはプラスの方向に行かないからとか、親御さんが傷つくからなのでしょうか。

そうそう。家族が原因じゃないとしても、反省したほうがいい家族はあるんですよ。僕は家族が無罪放免されることには反対ですね。やっぱりひどい家族はひどい家族としてちゃんと反省しなくちゃいけない。ただし家族非難に終始しちゃうのは、やっぱりまずいと思う。

―その上で、ではどうしていこうかということですよね。

こういう家だったら子どもは病気になるというトーンの方もいらっしゃいます。それはちょっとまずいかなと思いますね。

―特定の家族から生み出されるものではないということですか。

そこが難しいんだけど、本人の性格とか本人のいろんな経験とか家族とか、全部が総合して破綻を来したときに、病気は起きるんですよね。みんなが一緒になって破綻したんだと思いますね。もちろん本人のパーソナリティーの問題は無視できないし、学校のいじめとか家族とか、全部無視できない。それがどこかの緊張で歩み合っていたのが、パチンと切れたときに疾患として出てくると思います。原因と言われると難しいけど、どこかが総合的な問題で破綻している。だから、そこをていねいに聞いてあげて、彼女が破綻を自分で修復できて、でも修復できる前に自分の破綻している事実がわからないといけないし、ひどい父親だったことを自分で言えなきゃいけないし、学校のいじめで教師の対応がひどかったら本当にひどかったと言えなきゃいけないし、言えて初めて自分で修復しようという気になるんじゃないですかね。だって、周りがみんな、あなたの家はいい家だって言っていて、子どもから親子関係を修復しようなんて思えないですよね。あのお父さん、やっぱり問題があると言えて初めて、自分がこの親子関係を修復していこうかなという気持ちになれると思いますね。