トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 ドクターに聞いてみよう!vol.1大河原昌夫さん

摂食障害の基本知識 ~ドクターに聞いてみよう!

今までの生活史を関心を持って聞くことが治療の第一歩です

―治療として、具体的にはどんなアプローチをなさるのですか。

この間も摂食の人が来たんだけど、生活史を詳しく聞かれたことのない人がいてびっくりしますね。僕は、家族旅行どこへ行ったとか、学校の弁当はだれがつくったのか、遠足はだれが一緒に行ったのか、学校の運動会はだれが来たのか聞くんですよ。それが大事なことだと思って聞くんですね。単にどこの学校出て何したじゃなくて、具体的に生活の個々の場面で家族のだれとどんな交流があって、友だちとの間にどんないじめがあって、それを両親が知っていたのか知らないのかということがとても大事だと思うんですけど、残念ながら医療機関においてそういうことが聞かれていないケースが多いと思いますね。多くの場合は、いじめがあっても両親に言っていない、後で知った、いわんや父親は知らなかったということが多いですよ。それはとても残念なことです。お父さん、何となく知っていたということもあるんだけど、子どもにとっていじめは大きいと思います。

―摂食障害の人で、いじめの経験がある人が多いようですね。私もそうなんですけれど。

家族の軋轢と学校のいじめ、この2つは大きい。

―ダブルですよね。

どんな思春期の病気もそうだと思うんです。不登校でもリストカットでもみんな同じだと僕は思うんだけど、やっぱり家の中の物言えぬストレスと学校のいじめ、教師を含めたいじめの二つは何といっても大きい。だから僕は学校で講演するときに、いじめだけは見逃さないでくれと言うんです。教師の対応は大きいと思いますね。教師から嫌がらせをされた子どももいる。そういうのを具体的に関心を持って聞くことが、とりあえずの僕の最初のアプローチですね。

―たぶん多くの病院でそこまで掘り下げて聞かれないのは、時間がないからではないかと思うんですが。

そうなんです、時間がないです。開業医が1人1時間聞いたら、お金がもたないから聞かない。勤務医も忙しいから、なかなかできない。僕がなぜ1人1時間聞けるかというと、僕は給料をもらっているから。土曜日の夕方から1時間話を聞いても、この病院は保険で診ているんです。日曜日の午後1時に予約しても、僕は保険診療で診ているわけ。だから患者さんは、日曜日であっても負担が少なくて済むわけです。もし僕が開業したら、とてもそれはできないです。

―時間外にお話を聞く時間を設けておられるのですね。

そう、平日の夕方とか午後も時間の空いているときに診ているんですが、時間がなくなれば、僕は今、土日が休みなので、そういう時間に来てもらっているんです。そのほうが僕も院内の携帯電話で呼ばれないし、集中できるから気が楽なんですね。だからそうしているんです、僕は。

―なるほど。そういう風にして、具体的な家族との話とか今までの生活歴を細かくお聞きする。

そこが絶対に出発点だと思います。本人のパーソナリティーの問題があるにしろ、とにかく今までの生活をこっちが関心を持って詳しく聞くことが第一歩ですよね。だから、よく根掘り葉掘り聞かれると言われるし、あと初診の人には怖いと言われる。とにかく若い女の人には、意外だったんですけど、半年もたって、最初のときは怖かったって言われますね。何であんなにしつこく聞くのか、それが意外だったと言われるんです。例えばお母さんと一緒に話をしに来るでしょう。「あなた、お母さんと一緒がいいの、どっちがいいの」と聞くと、「わかんない」とか「どっちでもいい」って言うんですよ。僕は、「いい加減にそれくらい自分で決めたら」と言うと、相手が「ああ、どうしよう」みたいになって、後でそういうシーンがとても怖かったって言うんです。でも、そういう人はそういうことすら自分で決めてこなかったというか、決めてこれなかったのかな。お母さんの圧力が強すぎたかもしれないし、どうせ10分で終わるんだからお母さんがいてもいなくても同じだと思ったかもしれないけど、そういう思い出を持っている人は多いんじゃないですかね。でもそういうこと一つとっても、その人がどういう家族だったかすぐ見えますし、判断材料になりますね。

―そこから家族関係みたいなものを推測して、お母さんを巻き込んで治療するのか、お父さんに入ってもらうのか、どうするのかという方針が出るわけですね。

そうそう。だって、臨床医の醍醐味というのは、そうやってどんな家族かということを想像していくことにあるので、そういう関心のない臨床医は摂食障害をするなと思うんです。この人はどんな家族だったのかなとか、どんな学校生活を送ってきた人なのかなという関心を持たなければ、治療はできない。それは決して家族が原因とかではなくて、その人が家族に対してどういう味わいを持ってきたかを抜きにはできないと思うんですよ。