トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 心理士さんに聞いてみよう!vol.1中村このゆさん

摂食障害の基本知識 ~心理士さんに聞いてみよう!

「女性同士が競争者から仲間になれるコミュニティ」としても、自助グループには期待しています

-中村先生は、摂食障害学会の評議員としての顔をお持ちです。摂食障害学会とは、どんなところでしょうか。

 私が摂食障害の学会にお誘いいただいたのは、初代会長の中井義勝先生(元 京大内科医)なんです。厚生省が立ち上げた班研究でずーっとご一緒させていただいてたので、「評議員で入ってください」って。会員はお医者さんが多い中でのお話なので、それは非常にありがたいお言葉だと思って、本当に喜んで参加させてもらったんです。 …で、その学会に行って、もう一つ嬉しかったことは、他の学会っていうのは、良くも悪くもお医者さんによるお医者さんのための…というのが多いわけですね。ご発表なんかもお医者さんが多いし。でも、ここの学会では、パーセンテージとしては少ないですけど、心理臨床家も発表できるし、それから、看護師さんも発表できるし、そしてやっぱり、なにより嬉しかったことは、当事者である患者さん・家族会、それから、かつらさんなんかも属しているセルフケアグループの人たちも学会で堂々と発表されているということは、すごい嬉しかったですね。

-自助グループも学会で発表されてるんですか。先生は、自助グループを応援していると聞き、とても嬉しく思いました。

 あの、そのことについて、もうちょっとお話しても良いですか。
 21世紀になって「摂食障害の治療っていうのは、どういう風になっていくべきか」って考えた時に、まあ…はっきりいって周囲はすごい冷たいですわ。本当に、ちゃんとした機関・病院もないし、外国だったらあるような摂食障害に関して専門家が集まった治療機関もないしね。摂食障害っていうのは、色んな専門家が集まって治療しますのでね。お医者さんだけでもダメ、心理士さんだけでもダメ。…で、そういう風なセンターもないしね。本当に患者さんは、どこに行ったら良いのかわからないって感じ。難民っていうか、そうなっちゃうんですね。でも、患者数はドンドン、ドンドン増えていっている。それは好ましいことではありません。その時に、克服したり回復した人たちが声を上げて、そして、「自分達で助け合って、やろうよ」って、自然発生的に起こってきてますよね。それって、偉い専門家の先生が「自助グループをつくろう!」って言って始まったわけじゃないですよね。ところが最初、専門家はですね、割とクールなんですね。「なんか、やってはるわ」みたいな感じ。でも今、学会の中でも一つの立場を得るくらいの大きな力をもってきたわけです。それは、まさしく効果があるからです。いいですか。だから、先生方がたくさん勉強して、新しい治療法とかを次々取り入れて、やることも必要ですよ。だけど自助グループ、それから同じ悩みをもつ人たちが語りあう場所。やはりこれは女性…まあ、男性が入ったらイカンとは言いませんが…、女性同士のネットワークだということは非常に大きいことだと思ってるんです。…で、そういうふうにグループの中での治療っていうか、自分達で立ち直っていくっていうのは、自然な流れであること。それから、摂食障害が病院から離れてコミュニティーの中でね、自分らの問題であるというっていうふうに捉えられていく良い機会だと思うし、まあ、平たく言えばとても期待してるんです。

 ただね、残念なのは、そういう人たちに対して、何も公(おおやけ)の援助がないということです。これはちょうど、学校恐怖症とか不登校が辿った歴史とほぼ一緒なんです。不登校というものが日本の中でどう扱われ、どういう風に専門家は関り、どうなっていって…っていう、そんな流れと一緒なのね。不登校は最初、学校恐怖症って言う小児神経症という病気だったんです。しかし、だんだん、あまりに増えてきてね。これも文明病なんですけどね。…で、そして次に登校拒否という名前に変わって、今は不登校っていう名前に変わりましたが、最初は親御さん達はすごく困られて、もちろん小児科医のところに行き、児童精神科医の所にも行き、あちこちさ迷われて。居場所がない。…で、例えば、非常に有名な東京シューレっていうフリースクールがあるんですけれど、そこは、ご自分のお子さんが不登校になられた小学校の教員のお母様が、子どもに居場所を作りたいということで、自分で私財を投げ打って、1人で始められたんです。…で、そうしてドンドン全国から不登校の児童生徒が集まってきて、大きくなって東京シューレ(シューレ=ドイツ語で「学校」)が出来て、そうしてある程度力がついて、やっと国から認められ、援助が出たのね。実績主義なんですよ、日本は。だから今、未来蝶さんも、どこの自助グループもみんなそうです。運営費とかですごい苦労してらっしゃると思うんだけど、それはやっぱり、日本の社会の中でそういう活動が認められていくきっかけとして、摂食障害学会にそういう人たちが集まってネットワークが出来て、情報交換が出来て、そうして日本全国に点と点が結びついていって、一つの社会運動のようになって、そして、例えばたくさんのNPOが出来るというような形になっていったら、もっともっと社会的に認められるし、たくさんの人がそういったところに参加することが出来て、早い段階で救われたり、摂食障害とともに生きながらも、より充実した、質の高い人生を送れたらそれで良いかなァって、思ってます。

-先生が、こんなにも自助グループを応援していると知り、すごくジーンと来ました。

 うん。専門家が出来ない効果があるんですよ。さっき、不登校の例をあげたけどもね。何でもそうです。DVサバイバルの会も児童虐待のサバイバルの会も性的被害を受けた人のサバイバルとかもね。そういう人たちっていうのは、やっぱりこうみんな自分達で回復者として「自分もそうだったんだ。自分はなんとか乗り越えたから、同じ悩みのある人を、次は助ける側に回ろう」っていう活動。そういうのはやっぱり、アメリカは非常に盛んなんですね。だから日本もそうなったら良いなあって。 あと、今の社会は「女性同士が仲間ではなく競争者にさせられている社会」ということに対しても、自助グループには期待してます。

-それはやっぱり、「痩せる」「痩せない」とか「太ってる」「太ってない」という競争という意味ですか?

 そう。女性同士っていうのは密でね、いわゆるgirls talkって言ってね、ぐじゃぐじゃ話してるけれども、ある意味ではどっかで「競争者」。例えば「どうした方がより美しいか」とかね、もっと露骨にいえば、「どうした方がより異性の関心を引くか」「どうした方が勝ち組になれるか」とかね。…で、例えば色んな商品が売られてますよね。「これで差をつけよう」「これで一クラス上の~になろう」「こうしたらお嬢様っぽく見える」とかね。差別化ですよね。その目的は何かって言ったら、男性の関心を惹くっていうのもあるけども、「他の女性からも羨ましがられよう」とかね。そうすると、他の女性たちっていうのは仲間ではなく敵ですよね。「この秘密だけは誰にも言えない」(笑)みたいなね。「どうしたの?今日は髪が綺麗で」「うん、これは秘密」みたいなね(笑)。だけど、自助グループはすごく良いなと思ってるのは、フェミニストの考え方で、woman grows in women’s network(ウーマン グロース イン ウィミンズ ネットワーク)というのはですね、女性のネットワークの中で女性が育つ…という考え方なんですね。でもそれは、お母さんと娘が仲良くくっついてるっていうことではありませんよ。社会文化的な「女性はこうあるべし」っていったようなところから、少し自由なコミュニティーっていうのを確保して、その中で本音のトークが出来て、そうして自分が自由に表現できて、そうして「女性は競争者ではなく、助け合ってくれる仲間なんだ」っていうところで人間への信頼をとりもどす…っていうのを、一つのコミュニケーションのスキルアップという部分で自助グループに期待しているんです。