トップ >> 治療に関する情報 >> 摂食障害の基本知識 心理士さんに聞いてみよう!vol.1中村このゆさん

摂食障害の基本知識 ~心理士さんに聞いてみよう!

女性の生きづらさと摂食障害を非常に関連づけて考えています

-先程、バーモンド大学で先生が影響を受けたと言う「フェミニズムの考え方」についておっしゃっていましたが、それは具体的にどのような考え方でしょうか。

 私は、心理臨床家であると同時に、自分はフェミニストだと思ってるわけです。それで、今日はあなたにこの話を是非したいと思ってて待ってたんだけど、「なんで摂食障害が女性に多いのか」っていうところから掘り起こして考えた時にね、三段論法で言えばですね、
 ◆摂食障害は女性に多い
 ◆摂食障害の人は低い自己肯定感を持ちやすい
 ◆すなわち、女性は低い自己肯定感をもちやすい
ということです。まあ、…男性もいますけどね。これはですね、私は『今のあらゆる社会で、女性の方が生き辛いんだ』と思います。これを言えば、男の人からブーイングがあがると思います「男だって大変だ」ってね。ただ、表現が違うのね。男の人も自己肯定感が低かったりするんだけど、男性っていうのは例えば、他人に対する暴力・DV・児童虐待・粗暴犯と言われる人たちであるとか触法行為とか、外に自分の欲求を出すという風に、ジェンダーとして育てられるわけです。ところが、女性の方は、低い自己肯定感を持ったときに…、まあ…子どもを打つ(ぶつ)人もいますが(笑)、そうではなくて、自分へ攻撃性を向けるわけですね。…でその「表現だ」っていうのは、例えば「自分はこんなにしんどいんだよ」「自分っていうのは、こんなに自信がないんだよ」って言う時に、やはり女性は自分へ攻撃性を向く表現を取りやすい。それら全部を見ると、やはり『社会の中で女性がどのように置かれているか…ということと深く関る』というふうに私は思っています。
 でも、例えば発展途上国といわれる所から見れば、「(日本の女性の)地位は、(発展途上国の女性の地位より)ずっと高いじゃないか」と、思われますね。そしたら、「(女性の地位は)高いのに、なんで?」って思うんだけれども、そこにはもう一つ商業主義っていうのが入っていてね。例えば、「痩せている女性が良いんだよ」とか「スマートでないと、いけないんだよ」とかいったようなことを、女性たちが大量に、毎日毎日、情報を押し付けられる社会でないと、そういうことは起こらないわけなんですね。

-いわゆる、洗脳のような感じですか?

 そうですね。だから、私が学生に言っているのは、摂食障害の発症地域っていうのはマクドナルドとコカコーラのあるところって言ってます(笑)。

-あー、なるほど。

 アメリカとか白人女性の美のスタンダードっていうのが、大量の商業主義とコマーシャリズムと、宣伝とで、ドンッっと入る地域になると、摂食障害がウワーッと出てきます。だから、中国でも上海・香港・北京都市部ですね。それから、イスラムの国ですね。いつも学生さんに言うんですが、イスラムには色んな宗派がありますよね。宗派によって、頭から足元まで覆う衣服を着てますよね。あの衣服で外へ出るのに、なんで痩せなきゃいけないのって訳ですよ(笑)。でもそういう人たちの知識層とか富裕層で、西洋のそういった文化に触れている人たちから摂食障害になるんです。お金持ちでない人は、摂食障害にはなりません。それは、いちいち文献を挙げられないんだけれど、国際的な摂食障害の研究で、色々と出たりしてるんで、そんなに間違いではないと思います。

 …で、私が今日、絶対言いたかったことは、『私は、ジェンダーステレオタイプっていうことと摂食障害とを、非常に関連づけて考えている』ということです。ジェンダーステレオタイプ。まあ、「決まりきった性役割」っていうことです。例えば、「女性は美しくなければならない」「可愛くなければならない」「女性は優しくなければならない」「女性はよく、人より気がつかなければならない」「女性は、自分がお世話されるより、人をお世話できなくてはいけない」「よく気がつかなくてはならない」…といった、外見や行動や考えのあり方の「性のありかた」です。反対に「男性は強くなくてはいけない」それから、外部容姿は構わなくて良いけれども、「社会的なパワーを持たねばならない」…要するにお金を持つということです。それから、「攻撃的でなければならない」。こういったものというのは、あなたも私も私たちの社会も、ほとんど無条件で取り入れています。…で、それを全部失くすのには非常に難しい。しかし、その延長線上に「女性は美しくなるために、どうたらこうたら…」というダーッっとこう…色々な産業があるわけでしょう。そういうものに摂食障害の人は陥落してしまいますね。それから、自分が嫌だと思うことを、人に必死で攻撃するよりかは、嫌なことがあった時に自分の身体を攻撃してしまう。だから、そういった「女らしい」…これは、ボスキン アンド ホワイト著書の「女らしさの病」という本を読まれたら良いと思いますけれど、そういう「摂食障害っていうのは、今の私たちの社会が考えている、全う(まっとう)だと思われる性役割の中にじつは潜んでいるのだ」ということ。…で、ここからが正常でここからが不正常だという線引きは非常に難しい。だから「当たり前だ」と今まで思っていることを「本当にそうなのか」という風に問い直す姿勢みたいな、相対的な価値観というか違う視点から物を見るというか、そういったことがある程度助けになるかもしれません。でも、そこに行くまでが大変で…「言うは易し」でね(笑)。もう頭の中は、「痩せた若い人は美しい」とか「輝いて見える」とか「どうしてもあのブランドの7号の服が着たい」とかね。「何?痩せること?それがどうしてん」という所までは、なかなか行きません。